近年のミステリー・ランキングの常連であり、『嘘と隣人』が第173回直木賞候補となった芦沢央さん。芦沢さんの社会派ミステリー作品『夜の道標』が、9月14日からWOWOWにて連続ドラマ化されます。実は『夜の道標』で事件を追う窓際刑事、平良正太郎の退職後を描いた作品が『嘘と隣人』です。ドラマ化を記念して、芦沢さんに作品について聞きました。

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【ドラマあらすじ】
 1996年、横浜市内で学習塾を経営する講師・戸川勝弘が殺害された。被害者の元教え子で軽度の精神障害を抱える阿久津弦(野田洋次郎)が容疑者として捜査線上に浮かぶが、事件発生から2年たった今も足取りはつかめない。捜査が縮小する中、窓際刑事の平良正太郎(吉岡秀隆)が刑事課長・井筒勲の指示で、若手刑事・大矢啓吾(高杉真宙)とともに戸川殺しの再捜査をすることにーー。

©WOWOW

――完成したドラマをご覧になっていかがでしたか。窓際刑事の平良正太郎役に吉岡秀隆さん、1996年の殺人事件の容疑者・阿久津弦役にRADWIMPSの野田洋次郎さん、阿久津をかくまう同級生・長尾豊子役に瀧内公美さん、平良の相棒の若手刑事役に高杉真宙さんと豪華なキャスト陣が揃い踏みです。

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芦沢央(以下、芦沢) とても幸せなドラマ化だと思いました。

 本当にキャストの皆さん一人ひとりが登場人物について深く考えてくださっているのが伝わってきて、私が原作で書いていたシーンでも、そうかこの人はこのときこんな表情をしていたのか、と教えてもらったように感じることも。

 ストーリーは全部知っているはずなのに、想像以上に感情を揺さぶられて圧倒されました。

 吉岡秀隆さんがドラマについてのインタビューで「WOWOWのドラマは映画でもあり、テレビドラマでもあり、全話でひとつの作品になっている」とおっしゃっていましたが、まさにその通りで、すべてのシーンが見逃せない緊迫感を持っていると思います。

芦沢央さん ©文藝春秋

――ドラマ化のお話を初めてお聞きになったときはどのように思いましたか。

芦沢 原作は、一人ひとりの切実な人生の断片が絡み合うことで浮かび上がる光景、奇跡的な化学反応のようなものを、私自身が見たくて書いた物語です。

 実は、執筆前には絵コンテのようなものを描いてそれぞれのシーンのイメージや視点の距離感をつかんでいっていたので、正直なところ、映像化されることへの不安もありました。

 でも、WOWOWの製作陣の皆さんとお話をする中で、この方々にお任せすれば大丈夫だ、映像のプロの皆さんの化学反応の結果どんな光景に出会えるのかを楽しみにしよう、と心強く感じたのを覚えています。