窓際刑事・平良正太郎のその後

――窓際刑事ながらも犯人に迫っていく平良正太郎の退職後を描いたのが『嘘と隣人』です。平良のその後を描こうと思った理由を教えてください。また、『夜の道標』と比べて、テーマや読み心地の違いなどで意識された点はありますか。

瀧内公美さん演じる同級生・長尾豊子は阿久津をかくまう ©WOWOW

芦沢 実は、私が最初に書いた平良正太郎の物語は、『嘘と隣人』に収録されている「アイランドキッチン」でした。

 定年退職後の元刑事が、日常の中で過去の事件に向き合うことになる話を書きたいと思い、短編として書き上げたのですが、その後『夜の道標』のアイデアを練っていくうちに、ちょうど正太郎が現役時代の頃だなと気づき、彼ならこの1996年の事件にどう向き合うのか知りたくなった、という流れです。

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平良の相棒の若手刑事・大矢啓吾を演じた高杉真宙さん ©WOWOW

『夜の道標』では、組織で生きる刑事として苦悩しながら捜査をしていくのに対し、『嘘と隣人』ではしがらみがなくなった代わりに捜査権限もなくなっています。

「仕事でもないのに調べる資格があるのか」と葛藤しながら、それでも謎や他者の悩みに寄り添わずにいられない――『夜の道標』をお楽しみいただいた方には、ぜひそんな正太郎が描かれる『嘘と隣人』もお手に取ってみていただけたら嬉しいです。

嘘と隣人

芦沢 央

文藝春秋

2025年4月23日 発売

INFORMATION

WOWOW
「連続ドラマW 夜の道標 -ある容疑者を巡る記録-」
9月14日(日)午後10時より放送・配信
出演:吉岡秀隆 野田洋次郎 瀧内公美 高杉真宙

【期間限定!第1話無料公開】連続ドラマW 夜の道標 -ある容疑者を巡る記録-
https://youtu.be/CecMG_gE-5c

■連続ドラマW 「夜の道標-ある容疑者を巡る記録- 」特報映像
https://youtu.be/_QiLMSE57rU