履歴書に書いた内容は…

 ただ、今度は自身が執行猶予中の身であることは隠した。

「面接では前科・前歴も確認した。谷本くんは『前科や犯罪歴はない』と言い切っていたので、それを信じていましたが……」(同前)

容疑者が勤務先に提出した「履歴書」

 この頃、谷本は金に困っている様子で、入社時から会社に借金を重ねてきたという。

ADVERTISEMENT

「入社半年後、谷本くんに『5万円前借りしたい』と頼まれました。結局、合計30万円ほど前借りを続け、キリが無いので理由を聞くと『親に仕送りしている』と言う。さらに問い詰めると『300万円の借金がある』と。借金の理由は、施設で暮らす親の介護費用を賄うためと説明されました。今となっては、これも本当かは分からない。ただ、寮に金融機関からの督促状が届くこともあり、サラ金から金を借りているとも言っていました」(同前)

 実際、谷本が別の会社に提出していた「家族連絡先」の住所欄には、父親の連絡先として、大阪市内の老人ホームの住所が記されていた(同施設を訪ねると「色々聞かれますが一律でお答え出来かねます」と回答)。

親族女性の自宅を訪ねると…

 見かねたX社長は、懇意の弁護士を紹介。自己破産の手続きを進めていたが、その途中で、今回の事件が起こり逮捕されてしまった。

「彼は勤務態度が真面目で『長く勤めてほしい』と思っていたが、裏切られたという気持ちです」(X社長)

 また、X社長によると谷本は今年初めから“神戸への未練”を仄めかしていた。

「昨年末、谷本くんが神戸に帰省する前に、業務に役立つ『運行管理者』という国家資格をとらないかと打診しました。すると年始に職場に現れなかった。彼が無断欠勤をするのは初めてでした。1週間ほど仕事を休んだ後、『前に勤めていた神戸の会社から引き抜きの打診を受けた』と打ち明けられ、運行管理者の話を断られたんです」(同前)

 これを踏まえ、今回の夏の帰省前にもX社長は「ちゃんと帰ってこいよ」と告げた。谷本は「戻りますよ」と返したものの、結局、彼は卑劣な犯罪に手を染めた末、奥多摩に逃走し、戻ってくることはなかった。

谷本将志容疑者 ©時事通信社

「本当にショックを受けています。プライベートの時間かつ、お盆休み中の関西での出来事。社長として何かしてあげられなかったのか…‥責任を感じる部分はあります」(X社長)