「魔女狩りってこんな感じだったんだろうな。『私は魔女じゃない』って、いくら叫んでも誰にも信じてもらえなかった」

 そう振り返るのは、大阪・北新地の「クラブ藤崎」の藤崎まり子ママ。5年前、ネット上で撒き散らされたあるデマの被害者になった。

 このデマによって藤崎ママは実に26人を相手に損害賠償を求める訴訟を起こし、いずれも相手方に金銭の支払いを認める判決や和解等で終えた。藤崎ママの代理人弁護士は言う。

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「今もし同じことが起きたら、これも『陰謀論の一種』と言われるかもしれませんね」

 ネット社会に蔓延る真偽不明の言説、陰謀論の正体に迫る本連載。第1回では、兵庫県で斎藤元彦知事を巡る陰謀論に巻き込まれた事例を紹介したが、これは決して局所的なケースではない。現代ではいつ誰がターゲットにされてもおかしくはないのだ。第2回は、その被害者たちの声を聞く。

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志村けんの急逝をめぐって災厄が…

 2020年3月、未知の病原体に対し、国民は不安を募らせていた。真偽不明の情報が飛び交う中、国民的人気コメディアンの志村けんが新型コロナに感染して入院中というニュースが流れると、その不安感はピークに達した。

新型コロナで亡くなった志村けん ©文藝春秋

 志村は、報道からわずか4日後に急逝。世間に衝撃を与えた。そんな中、藤崎ママに思いもかけない災厄が降りかかった。本人が当時を振り返る。