グイ・ルンメイ 人形劇の演出と振り付け指導をするブレア・トーマス先生がいて、彼女とは本当に綿密にコミュニケーションを取りました。練習もそうですが、真利子監督も含めてかなりディスカッションを行いました。やはりジェーンの心の中で抑圧されている感情を、どういう振り付けや芝居をすれば観客――それは映画の中の人形劇の観客と、この映画の観客を両方含めてですが――みんなに伝えることができるのか。その辺はすごく時間をかけて何度も何度も議論をしました。

©Roji Films,TOEI COMPANY,LTD.

真利子哲也監督と話したこと

――真利子監督とはジェーンについてどんな話をされましたか?

グイ・ルンメイ まず、ジェーンの過去についてよく話し合いました。たとえば、彼女はいつ頃アメリカに移住してきたのか。ジェーンがどれくらい英語を綺麗に喋れるのかは、移住した年齢と関わってくるのでとても重要ですから。そこで監督と色々議論をして、多分ジェーンは中学生の時に台湾からアメリカに移住して、それで生活が一変したというように設定をしました。

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 私は英語版の脚本を読んでいたんですが、元々は真利子監督は日本語で脚本を書いていました。すると翻訳された英語の脚本では、「どうしてこのタイミングでこのセリフをこの人物が言うのか、理解できない」ということが時々出てきました。やはり日本語から英語に翻訳する時に、ニュアンスがちょっと変わったり、あるいは抜け落ちていたりするんです。その辺りは真利子監督に確認して、よく話し合いましたが、それは監督が何を語りたいのかを、私としてはきちっと把握しておきたい、という気持ちでした。

撮影:佐藤亘

――真利子監督ならではの演出の特徴みたいなものがあったら教えてください。

グイ・ルンメイ 現場での真利子監督の演出は、本当に我々役者に自由を与えてくださっていました。さらに特徴的なのは、監督は非常に耳が良いんです。たとえば、全員集まって読み合わせをした時、監督は私たちの声のトーンをものすごく気にしました。セリフの内容よりも、こういう時はこういう口調、こういうトーンで語るということを、細かく判断するんです。今まで現場ではそんなことはなかったので、そこはすごくユニークに感じました。