“不倫ドラマ”でブレイク→修羅場が似合う女優に

 そもそも、松本がブレイクするきっかけとなったドラマ『ホリデイラブ』(2018年/テレビ朝日系)も“不倫ドラマ”だった。松本が演じた里奈は、主人公・高森杏寿(仲里依紗)の夫・純平(塚本高史)の浮気相手。ゆるく巻いたロングヘアにガーリーなファッションの里奈は、かわいらしく、自分の気持ちをすぐに伝えられる素直さも持ち合わせていた。

 これだけならまだ“かわいい人”ですんだのかもしれないが、里奈は自分のそんなところを明確に“男性を誘惑するための武器”として自覚しており、「帰りたくないなぁ……」と言って純平に抱きついたり、突然キスをしたりした。小悪魔すぎるその態度が、視聴者を絶妙にイラつかせ、大きな話題を集めた。

 その後も『奪い愛』シリーズをはじめ、“サレ妻”の復讐を描いた『夫の家庭を壊すまで』(2024年/テレビ東京系)、ハッピーエンドだが結婚詐欺師を演じた『ミス・ターゲット』(2024年/ABCテレビ・テレビ朝日系)など、松本はなにかと“修羅場”の多いドラマに引っ張りだこだ。

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『奪い愛、真夏』公式Instagramより

 どうして松本の演技は、これほどまでにドロドロしたシチュエーションにぴったりハマってしまうのか。

 それは、松本が“ヤバめだがギリ普通”の女性を演じることに長けているからではないだろうか。“ギリ普通”というのが注目したいポイントである。

『奪い愛、真夏』の第7話では、真夏と時夢の関係を、時夢の妻である未来(高橋メアリージュン)が自ら描いた絵画を通して社員に暴露するシーンが描かれた。真夏はその場で泣きながら半狂乱に。

 周りにバレるということは、不倫をしていればいつかは訪れる場面なのに、いざその時がきたら、その現実を拒否することしか考えられなくなったようだ。きっと時夢といる時はそんなことも考えず、真夏の頭の中は「この人が好きだ!」という思いでいっぱいだったのだろう。

 “ギリ普通”な人は、ちょっとしたことでその普通さを失ってしまう。上記にまとめた真夏の行動は、その場その場で爆発する感情がそのエンジンとなっており、自分勝手に突っ走った行動だ。