「すれ違い」による離婚も経験

 だが、この頃からまた心身のバランスを崩してしまう。もともと対人コミュニケーションは得意ではなかった。人見知りで、人を近づけないようなところがあったという。「私は基本、人嫌いなので」とも語っている(週刊女性PRIME 2018年2月2日)。

 人を近づけないようにしていたのは理由がある。人の気持ちが心に入って来すぎるため、あえて感情をオフにしていたのだ。映画も感情が揺れすぎるため、あえて観なかった。観たときも、わざと感動しないようにしていた。そうやって自分を守っていたのだ。2015年、27歳のときのインタビューでは「私、すごく生きにくい人間なんですよ」と告白している(『FILT』 2015年JUNE-JULY)。

木村文乃公式Xより

 しかし、それでは満足のいく芝居ができない。だから感情を「オン」にするようにして、また生きにくい生活に戻った。インスタグラムで持病のアトピーについて告白して話題になったのは2016年春のこと。この年の秋には最初の結婚をしているが、2019年に「多忙による生活のすれ違い」を理由に離婚している。

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芝居を好きになれなかった

 負けず嫌いだが、自己評価は高くない。「私は本当に凡人なので、自分には特別なものが何もない」と語っている(週刊女性PRIME 2017年11月19日)。10代から活躍している同世代の女優たちへのコンプレックスもあった。だから次々と仕事をこなすしかなかった。

©文藝春秋

 自分のことを「補欠ヒロイン」と表現したこともある(シネマトゥデイ 2018年1月12日)。先に検討されているヒロイン(女優)がいて、何かの理由でキャンセルされたとき、自分に出番が回ってくる。だから補欠ヒロイン。でも、それでいい。自分にできることを頑張ればいいと考えるようになって気が楽になったという。

 しかし、当然ながら芝居は楽しくなかったし、仕事自体も嫌になっていった。木村は「『好きなもの』の中にお芝居が入ってこなかった」「自分の中でお芝居は仕事でしかなかったということに気づきました」と発言している(CREA 2022年9月9日)。