人気番組『プレバト!!』(TBS系)はこの夏、放送500回を超えた。芸能人が芸術的素養についてさまざまなジャンルで競い合う本番組で、特に人気なのが、俳人・夏井いつき氏が講師を務める俳句部門だ。夏井氏と総合演出の水野雅之氏が、山あり谷ありの十余年を振り返った。
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俳句は最後のカードだった
水野 夏井先生が初めて番組に出てくれたのが、2013年11月でした。放送が始まって1年ほどが経った頃で、視聴率も苦戦していて番組が続くかどうかの瀬戸際だった。いわば俳句コーナーは最後のカードでした。ケーブルテレビかどこかのローカル番組で一般人の俳句をキレキレに講評していく夏井先生のトークと振舞いを見て「このおばちゃん面白い!」とまずはオファーを即決しました。
夏井 私は地元・松山で残りの人生を夫婦でのんびり過ごそうと思っていた頃でした。出演オファーをいただいて、まぁ俳句を広めるきっかけになればいいかなと、それくらいの軽い気持ちでOKしたんです。当時、私の家にはテレビがなかったし、芸能人も和田アキ子や泉ピン子に、それこそ梅沢富美男くらいしか知りませんでしたから。
水野 最初の収録、覚えてます?
夏井 もちろん。こんな下手くそな句を添削するのかと、本当に腹立たしかった(笑)。普通、句会では下手な句は誰も選ばず、選ばれた句しか話題に上りませんからね。おまけにその日は、何年かに一度というぐらいのひどい二日酔いだった。
よく覚えているのは、モニターに映る浜田さんが「おもろ~、おもろ~」と言って机を叩いていたこと。「俳句は面白いに決まってるよ、何を今さら」と思いながらバサバサ添削していると調子も出てきて、終わる頃には「ああ、今日もビールがうまいぞ」とスッキリしていた(笑)。

