「会社員は毎月お給料をもらえます。私も会社員だった時代があるのでよくわかるのですが、会社員にとっての収入は『労働そのものがお金になる感覚』なのです。でもフリーランスにとっての収入は『成果がお金になる感覚』です」
今年でデビュー10年、これまで多くの編集者と仕事をしてきた小説家の額賀澪さん。ところが、中にはフリーランスとして働く額賀さんを困らせる編集者も。新人の書き手が知っておくべき、「要注意の編集者」とは? 新刊『小説家デビュー1年目の教科書』(星海社)より一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目/最初から読む)
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フリーランスの立場を理解しない“会社員”編集者に気をつけろ
小説家という仕事は、どれだけ長時間執筆をしても、寝る間を惜しんで構想を練っても、その時間に給料を支払われることがありません。書き上がった原稿=成果物に出版社が印税や原稿料を払うことで、やっと収入を得ます。会社員とは生態が大きく違います。
専業だろうと兼業だろうと、小説家である自分はフリーランス(個人事業主)なのです。
フリーランスの編集者ももちろん多くいますが、編集者の多くは企業に所属する会社員です。その中には、フリーランスがどういう立場なのかを理解しないで仕事をする編集者も存在します。
そういう人は、まず支払に関する感覚がルーズです。
(例1)アンソロジーの〆切を3ヶ月後に指定された。〆切までに頑張って原稿を仕上げたのに、いつになってもアンソロジーが発売されない。なんと他の執筆陣のスケジュールの関係で、発売は1年後だった。
これは筆の速い作家の原稿を早めに集めて安心したい編集者がよくやるやつです。
こちらは他の仕事を調整して約束の3ヶ月後に原稿を提出したのに、なんと刊行は1年後。もちろん、印税の支払も1年後です。しかも、同じアンソロジーの執筆者に話を聞くと、「え、〆切は1年後でいいって言われたけど?」なんて返ってくることも。「こちらが急いで執筆したあの時間は何だったの?」という話ですよね。一方で編集者は「1年後とはいえ印税は払うんだからいいんじゃないか」と思っていたりします。
でも、そういう問題じゃないですよね。原稿=成果物を預かっておいて「支払は遅くなってもいい」という感覚が、フリーランスの仕事を軽んじているのです。
