「例えばこの本が『趣味で書いていた作品がたまたま新人賞を受賞し、書籍化することになった』という場合なら、趣味で作った作品が約60~70万円のお小遣いを作ってくれて嬉しい、ということになるかもしれないですね。でも…」

 意外に知られていない小説家の「収入事情」とは? 著書多数、デビュー10周年を迎える小説家・額賀澪さんの新刊『小説家デビュー1年目の教科書』(星海社)より一部抜粋してお届けする。(全2回の1回目/後編を読む)

写真はイメージ ©getty

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本を1冊出したら、作者の収入はどれくらい?

 本を出したときの作者の収入は「部数×本の定価×印税率」で計算すると第1章で解説しました。ここではもう一歩踏み込んで、具体的な収入の話をしていこうと思います。

 収入を大きく左右するのが「初版部数」です。小説家に初版部数を聞くのは、年収を聞くのと同じです。定価と印税率から計算できてしまうので。デリケートな話題だからこそ、親しくもない人に無遠慮に聞かないようにしましょう……。

 小説は単行本と文庫本とで値段が変わるので、当然ながら部数の相場も異なります。こればかりはジャンルや出版社の規模、その作家がどれほど売れているか、出版社がその本を売ろうとしているかどうかで数字が変わるので、具体的な数字を挙げても役に立たないかもしれません。何より相場や平均がかなりの頻度で下降線を辿っているので、ここで書いた相場が1年後には相場でなくなっている可能性もあります。

 ただ、具体的な数字がないと計算も何もないので、2025年段階の初版部数の相場を、親しい作家や編集者へのヒアリングをもとに導き出してみました。

 単行本の初版部数が4000~5000部、文庫本の場合は6000~8000部が平均ライン、といったところでしょうか。私が聞いた範囲での最低部数も書いておくと、単行本で2000部、文庫で4000部というのがありました。