「直木賞が欲しい」と願う人気作家の破壊的な情熱を描いた村山由佳さんの話題作『PRIZE―プライズ―』(以下、『プライズ』)。2025年1月の発売以降、主人公・天羽カインの姿が多くの人の心をざわつかせています。

『PRIZE―プライズ―』書影

 文芸評論家の三宅香帆さんも本作に魅了された読者のひとり。各所で『プライズ』をご紹介くださっています。

 そんな三宅さんと著者の村山さんの対談が実現。その模様をお届けします。(全3回のうちの1回目)

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新たな鉱脈を求めて

三宅 『プライズ』という作品を私は友人からの評判で知ったんです。「オール讀物」で連載されているときからその友人が「村山さんの『プライズ』がやばくて、それを読むために雑誌を買ってる」とまで言っていたんですよ。だから私も読みたいなとずっと思っていて、単行本になったときに手に取ったらもう一気読みで! その後、友達6人くらいで集まって読書会までしちゃいました(笑)。

村山 わ~、ありがとうございます! 読書会、内緒で聞きたかった!

三宅 そもそも直木(三十五)賞を小説の題材にしたのは、どこからの発想だったんですか?

村山 一番大きいのは「オール讀物」が連載の舞台だったからです。直木賞の発表媒体である「オール讀物」だからこそできる何か面白いことがないかと考えて、これに決めました。

 私はデビュー後しばらくは、爽やかな青春恋愛小説ばかりを書いてたんですけど、直木賞をいただいた後、試行錯誤の時期を経て、『ダブル・ファンタジー』という作品を機に立て続けに性愛小説を書くようになりました。なぜかと言うと、当時の私にとって一番恥ずかしいことが自身の性愛や性的欲求に関することだったんですね。一番恥ずかしいことを深く掘って書いていくと鉱脈に当たると気づいたんです。

 自分にとって一番書きたいこととか嬉しいことを書いていても、今までと違うものってなかなか書けないんですけど、恥ずかしいものについて書くと妙な化学変化が起こる。近年、性愛についてはもう十分書いたかなと思ったときに、じゃあ今の私にとって何が一番恥ずかしいことなのかなというのを担当編集者と話し合っていて、「褒められたい」「認められたい」、もっと言えば「賞が欲しい」という承認欲求だな、と。