村山由佳さんの最新長篇『PRIZE―プライズ―』が2025年1月8日に発売されました。本作は、人気作家・天羽カインを主人公とする小説です。村山さんはなぜいま、小説家を主人公とした物語を書いたのか。その真意に連載担当編集が迫る特別インタビューをお届けします。
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長年、取っ組み合ってきた自分の中の欲求
――「直木賞が欲しい」と切望する女性作家を描いた『PRIZE―プライズ―』(以下『プライズ』)。1年にわたって「オール讀物」に連載していただいた長編小説が、いよいよ店頭に並びましたね。
村山 作家生活32年目に入りますが、紫色の表紙って初めてなんです。ぎらつく欲望のようでもあり、いっぽうで何か切ない、手に入らないものの象徴みたいな雰囲気もあって、すごくいい装幀になりました。
――連載中、自分の中にある承認欲求をようやく言語化できたかもしれない、と村山さんから聞いた言葉が忘れがたく印象に残っています。多くの読者は、まさか村山さんがそこまで「認められたい、褒められたい」気持ちをもってるなんて……と、驚くのではないでしょうか。
村山 それはそうだと思う。隠しに隠してきましたもの(笑)。なぜいま「承認欲求」を描こうと思ったかは少しあとでお話しすることにして、今回、文学賞を欲しがる作家を主人公にしたのは、まぎれもなくかつての自分自身に覚えのある感情だったからです。「オール讀物」の連載だったこともあって、思い切って「直木賞が欲しい」と第1回で書くことにしたのですけど、賞にかぎらず作家として認められたい、評価されたい思いって、本当に長年、取っ組み合ってきた自分の中の欲求だったんです。今回それを全部注ぎ込めたかなと思っています。
――村山さんのデビューは1993年の小説すばる新人賞。受賞作『天使の卵 エンジェルス・エッグ』は累計200万部のベストセラーになっていますし、続けて刊行された『おいしいコーヒーのいれ方』も、長く続く人気シリーズになりました。
村山 おかげさまで「おいコー」は、27年間続けることができました。
――『プライズ』の主人公・天羽カインも、ライトノベルの新人賞でデビューし、あっという間に読者を獲得していきます。けれども文学賞という面では評価されず、鬱屈を感じている。これは村山さん自身にも覚えのある感情だったということですか。