「いやー、なんかめちゃめちゃシュールですね。空也上人と座って向かい合ってるって言うのが(笑)」

 日本で初めて「空也上人像」のコスプレイヤーとして認知された、中埜(なかの)さん。では長きにわたって、空也上人像を守り続ける聖地・六波羅蜜寺の人たちは空也上人像の姿で注目を集める彼をどう思っているのか? 今回は中埜さんが、京都にある六波羅蜜寺に直撃。動く空也上人像を目前にした副住職・川崎純圓(かわさき・じゅんえん)さんは何を思うのか……。(全2回の1回目/後編を読む)

空也上人コスプレイヤー(写真右)に対談を申し込まれた六波羅蜜寺の副住職(左)。この不思議な“御縁”にどう反応した? ©山元茂樹/文藝春秋

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空也上人像もコスプレされる現代

――今日はこうして機会をいただいて、ありがとうございます。

川崎純圓(以下、純圓) いやー、なんかめちゃめちゃシュールですね。空也上人と座って向かい合ってるって言うのが(笑)。

――純圓さんとは、2023年6月、東京駅の「そうだ 京都、行こう。」の企画でお会いして以来です。こうして今日、六波羅蜜寺でお話しできることになりました。ご縁に感謝ですねえ。

純圓 空也上人のコスプレをされていることは、その前から存じていたんですよね。十何年か前に、注目されているのを見て「なんや、空也上人もコスプレされる時代になったんやな」と驚きました。

 それで「そうだ 京都、行こう。」で東京駅に来られると聞いて、ご挨拶だけでもさせてもらおうかと思ったんです。そのあとXで中埜さんがまたバズらはって。それがちょうど8月の棚経の時、知り合いからLINEが来て「お前、夏コミ行ってんのか?」と。何を言ってるのかと思ったら、中埜さんのコスプレのことを指してて。

――忙しい時期にお騒がせしてすみません。

史上初!? “空也上人像”コスプレイヤーの中埜さん ©山元茂樹/文藝春秋

純圓 夏コミは、よく行ってる友達とかもいたんで、中高の時からコスプレという文化があるのは知っていたんです。でも、お寺の繁忙期と重なって、行けることがまずないんですよ。とても過酷な環境ということも聞いています。一昔前の情報で伝聞でしか知らないんですけど、建物の中に雲が出来るとか。今もそうなんですか?

――空調などの改善で少しはマシになってますけど、人の多さは変わらないですね。

純圓 コスプレは外でしはるんですか?

――コスプレエリアというのが屋内にも屋外にもあるんですが、僕は外が多いですね。本物の空也上人像って建物の中にあるものなので、逆に表にいようかなと。空也上人という人物が、街中を歩いたというお話もあるので、毎年青空の下での空也上人を撮影したりしています。

純圓 熱中症とか気を付けてください。

――ありがとうございます。空也上人は元々人気のある像だと思いますけど、近年その人気がどんどん上がってきている気がするんですよね。

純圓 うーん、そうですかね。まあ教科書に載ってるからって言うのもあるとは思います。近年では空也上人が NHK の『びじゅチューン!』という音楽番組で「ベーカリー空也」という曲で取り上げられて。それが 2016年かな。その後、コロナ禍での東博での展覧会や翌年の JR 東海とのキャンペーンもあって再注目されたのかと思います。

――コスプレを始めた16年前には「なんだっけ、教科書で見たことある」って言われていたのが、今ではみなさん「空也上人像だ」とちゃんと名前を呼んでくれるんですよね。