・ 高市氏「外国人、通訳間に合わず不起訴」発言 識者「実態と異なる」(毎日新聞9月26日)

専門家も「実態と異なる」と述べた高市氏の発言

 刑事事件を起こした外国人に関し「警察で通訳の手配が間に合わず、不起訴にせざるを得ないとよく聞く」と高市氏が発言したが、法務・検察幹部は「最後まで通訳が確保できなかったという話は聞いたことがない」と語っている。複数の専門家も高市氏の発言を「国のリーダーになる可能性がある政治家の発言は重い。データや具体的な事案があれば示してほしい」「実態と異なる」と述べている。何かを言えば根拠を問われまくる高市氏なのである。

 なぜこんなことを言うのか? 各報道では7月の参院選で「日本人ファースト」を掲げた参政党に自民党支持層が流出したとされている。こうした層にウケることを意識したとしたら重要な注目点だ。

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 というのも6月の東京都議選を現場で見たとき、排外主義的な演説の多さに驚いたことを思い出すからだ。しかも事実とは異なることも平然と言われていた。この流れは7月の参院選でも続くだろうと思い、いろんな候補者に「排外主義的な言説についてどう思うか」と私は聞いて回った。それほど外国人問題は“大化け“していた。そして今回の総裁選では候補者がこぞって「外国人政策」を掲げ、高市氏は初日から演説の半分近くを割いた。 

 候補者だけではない。報道番組も総裁候補を呼んで「安全安心を…外国人政策は」とテロップを出して尋ねていた(テレビ朝日「報道ステーション」)。いつしか「外国人問題」は経済対策などに匹敵するような扱いとなっていた。アメリカのトランプ大統領がせっせと真偽不明な自説を述べたらメディアが報じることで、まんまと深刻な問題のようになる現象を思い出した。それにしてもキャスターは本人たちが目の前にいるなら「治安悪化」などの根拠をいちいち聞いたほうがいい。

 高市氏と言えば、安倍晋三元首相の国葬に関して「反対のSNS発信の8割が隣の大陸からだったという分析が出ている」と述べたという件もあった。三重県議が高市氏の講演内容を記したメモをもとにTwitter(現X)に投稿したのだ。そのあと撤回し、高市氏も否定したが、発言を巡る騒動は今回の鹿ショックを想起させる。

 そういえば総務省の行政文書と確認された放送法解釈を巡る資料について、自身にかかわる記述の内容が「捏造」だと繰り返したこともあった。あれも真偽不明のままに終わったが高市氏はこの手の騒動が多すぎないか。かなりの頻度で自身の発言が問われている。