秋の装いといえば、つい注目しがちなのはアウターだが、実は重ね着の完成度を左右するのは、その下に着るカットソーである。とはいえ、今回紹介するのは、決してインナー専用というわけではない。一枚で着ても十分に様になる上質な素材と計算されたシルエット、そして着心地へのこだわりを備えた一枚たちだ。レイヤードの土台としても、単体での主役としても活躍する、本格的なカットソーを5つ紹介しよう。
Photographs : Mari Sugahara
Styling:Yuri Sugawara
Realization : Yuji Kuramochi
最高級ジャージーが紡ぐ、オールジェンダーな贅沢

「頂(いただき)」という名にふさわしい、最高級スーピマコットン100%のジャージー素材が生む、類稀な着心地。肩のラインを排し、袖の後ろ側の切り替えをなくすことで実現したユニセックスな設計は、性別という境界線を静かに溶かしていく。贅沢な分量感がもたらすオーバーサイズのシルエットは、着こなしに自然な抜け感とアクセントをもたらす。シルクのような光沢と洗練されたハリは、素肌が触れた瞬間にその違いを雄弁に語りかける。上質でありながら洗濯機で洗える実用性も兼ね備え、日常に寄り添う一着だ。この最高峰のジャージー素材は、糸の段階から丁寧な特殊加工を施すことで、唯一無二の風合いを獲得している。¥15,400/ソージュk(エム☎03-6721-0406)
イタリアンブランドが提案する、リラックスの品格

胸元のロゴと袖口のアイコンが控えめに存在感を主張する、タトラスの「シカード」。程よくゆとりを持たせたリラックスサイズでありながら、そこに宿るのは確かな品格だ。強度の高いコットンに、シルケット加工とバイオ加工を重ねることで実現した柔らかな風合いは、機能性と快適性の絶妙な均衡点を示している。袖口の切り替えがシルエットにメリハリを加え、立体的な表情を演出。シンプルなデザインゆえに、単品使いでも、インナーとしても真価を発揮する汎用性の高さが魅力だ。日本製ならではの丁寧な仕立ては、細部まで妥協のない作り込みを物語る。デイリーユースの中に上質を忍ばせる、知的な選択といえるだろう。¥28,600/タトラス(タトラス カスタマーセンター☎03-6277-1766)
ギザコットンが織りなす、贅沢な日常着

最上級のオーガニックギザコットンを3本撚り合わせた、三子(みっこ)撚りのサバイバル天竺。「美しく、仕立て映えし、そして丈夫」という理想を追求した、まさに最高峰のTシャツ素材だ。肩幅・身幅ともにゆとりを持たせたコンフォートフィットは、一枚で着用しても十分な存在感を放つ。太めのバインダーネック仕様により、首元の伸びを抑えつつ、きちんとした印象をキープ。高密度に編み上げた生地は、ハリがありながらも美しいドレープを描き、洗濯を重ねても原料由来の上品な光沢を保ち続ける。裾の広めの折り返しがモダンなデザインアクセントとなり、重ね着してももたつかないすっきりとした袖まわりも魅力だ。¥22,000/マーカウェア(パーキング☎03-6412-8217)
テクノロジーが実現する、次世代の快適性

速乾性、抗菌防臭性、UV遮蔽性に優れた機能素材を採用したロングスリーブTシャツ。最大の特徴は、ウェア全体を二枚生地で重ねた無双仕立てという贅沢な作りにある。一般的なカットソーでは裏側に見える縫い目を、この仕立てによって完全に隠すことで、肌あたりを軽減し、ストレスフリーな着用感を実現している。ストレッチ性と吸汗速乾機能を備え、動きやすさと快適性を両立。ミニマルで無駄のないデザインは、機能性を追求するデサント オルテラインの哲学を体現する。アクティブなシーンからデイリーユースまで、レイヤードのインナーとしても、一枚での着用でも、その真価を発揮する一着だ。¥22,000/デサント オルテライン(デサントお客様相談室☎0120-46-0310)
クラシックと現代が交差する、サーマルの新解釈

ファッションディレクター金子恵治氏とフルーツオブザルームとの共同開発により誕生した、サーマルコレクションの一着。「手に取りやすい価格の中でどこまでこだわれるか」という挑戦から生まれたこのアイテムは、数十種類もの試編みを経て完成した、10.2オンスのワッフル編みを採用している。表面の凹凸が生む豊かな表情と、コットン100%ならではの自然な風合いが魅力だ。Tシャツ素材であるサーマル生地に、スウェットシャツのデザインを取り入れるという発想により、軽やかさとボリューム感が共存。ヴィンテージのサーマルアイテムに見られる三本針表振り跨ぎステッチを各所に施し、現代的なシルエットの中にクラシックな魅力を表現している。ジャストサイズで上品に、オーバーサイズでリラックスした雰囲気に。着こなしの幅広さも楽しめる一着だ。¥6,380/フルーツ オブ ザ ルーム((株)ギャレット☎03-6845-7770)
これら5つのカットソーに共通するのは、素材へのこだわり、快適な着心地を追求する設計、そして現代のスタイルに合うデザインだ。レイヤードのインナーとしてはもちろん、一枚で着ても十分に存在感を放つ。秋のスタイリングにおいて、カットソーは決して脇役ではない。重ね着の土台としても、単体での主役としても、装いの完成度を高めてくれる。そんな一枚を選ぶことが、本当のおしゃれへの近道なのかもしれない。


