「我々は老舗の底力でやっぱり対抗する。聞く力を取り戻す」

 自民党総裁選で議員票2位に浮上した林芳正官房長官は、文藝春秋PLUSの独占インタビューでこう断言した。

 10月4日の投開票まで残りわずかとなった総裁選。当初は高市早苗前経済安保相と小泉進次郎農相の「2強」とみられていたが、ここにきて林氏が急速に支持を伸ばしている。「政界の119番」と呼ばれる政策通は、なぜ今、注目を集めているのか。

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(初出:「文藝春秋PLUS」2025年9月27日配信)

「文藝春秋PLUS」に出演した林芳正官房長官

「できもしないことは言わない」EXIT兼近の一言が刺さった

 総裁選前半戦を振り返る林氏の表情は穏やかだった。「短期の対策については今まで継承している部分があって、おそらく誰がやっても同じことになる」と冷静に分析する。

 一方で、各候補が物価高対策を声高に叫ぶ中、林氏が打ち出した「林プラン」は中長期の対策が中心だった。「目の前のところが薄いのでは」との批判もあったが、林氏は意に介さない。

「お笑いのEXITの兼近(大樹)さんがぽつりと『やっぱり去年もそうだったし今年も言ってるけど、結局やらないんだよね』みたいな冷たい目があると。けっこう刺さったんですよ」

 この言葉が林氏の政治姿勢を物語る。「やれることをきちっと説明しながら訴えていく。これが大事だ」と強調し、「できもしないことを言って、結局できませんでしたということでは、政治全体に対する信頼が毀損される」と続けた。

日本版ユニバーサルクレジットで「分厚い中間層」を守る

 林氏が提唱する目玉政策が「日本版ユニバーサルクレジット」だ。これは児童手当や住居手当といった各種給付を統合し、世帯状況に応じてポイント制で支給する制度である。

「同じ収入でも子育て中で2人お子さんがいらっしゃるのと、もう育っているとか、お子さんがまだいらっしゃらないのとでは負担感が違う」と林氏は説明する。

 この政策の背景には、他の先進国と比べた日本の特異な状況がある。「子育て世代で低中所得者のところの負担がポコっと飛び出ている。給付がやっぱり少ない、手薄になっている」

 一番大変な低所得、中所得層に集中的に支援することで「分厚い中間層を守る」――これが林氏の狙いだ。