連立時代に求められるリーダー像
総裁選が進む中で浮き彫りになったのは、自民党単独政権の限界だ。林氏は30年続いた小選挙区制の検証の必要性を訴え、「中選挙区制を軸にした新しい選挙制度に変えていくタイミングではないか」と持論を展開した。
多党化が進む政治情勢の中で、林氏が理想とするリーダー像は明確だ。「ある程度妥協というとニュアンスは悪いかもしれないが、合意を形成する。そしてそれを自分の支援者にはきちっと説明をする」
外務大臣時代にドイツの連立政権を間近で見た経験から、「連立の作法みたいなことはある程度分かっている」と自信を見せる。
「聞く力」を取り戻すデジタル国民対話
13年間の与党政権で失われたものについて、林氏は率直に認める。「聞く力が寄り添ってこれをやるというのが、だんだんちょっとずつ距離が出てしまった」
数字や文章よりも「熱とか雰囲気といった右脳的な部分が離れちゃった」という反省から生まれたのが、「デジタル国民対話プラットフォーム」構想だ。
「青森と和歌山と鹿児島の漁師さんに一度に会える。昔は青森に出かけて何人かに聞くということでしたが、それが一度に、しかも東京のオフィスからできる」
実際に前日、農家や漁師、介護福祉従事者との対話を試したという林氏。「マグロの漁師さんが『規制があるので取れないし、定置にかかったのも邪魔でしょうがない。2年分のクオータみたいなのできないの』と言っていた。現場の声はそういう声だ」
「野党の時代は、そこに行って話をずっと聞いていた」と振り返る林氏。谷垣総裁の「生声プロジェクト」の精神を、デジタル時代に蘇らせようというのだ。
「やるべきことはやる」と淡々と語る林氏だが、その政策通としての地道なアプローチは、総裁選の最終盤でどこまで支持を広げることができるだろうか。
