「住民が一丸となって災害復興に取り組む八代市では、市民への裏切り行為が連綿と続けられてきました。職員をも巻き込む不正行為は、決して許されるものではない」。巨額の官製談合の実態を、市の幹部職員が打ち明ける。

「税金の最たる無駄遣いばい。身の丈にあったものを作れば良かったとです」

 熊本県第2の都市・八代市。タクシー運転手が向けた視線の先には、閑散とした街に不釣り合いな巨大な箱物があった。

 八代市民が語る。

ADVERTISEMENT

「八代市では、2022年2月に市役所新庁舎が開庁しました。人口12万人に満たないこの小さな町で、地上7階、地下1階、総事業費171億円にのぼる巨額の公共事業は果たして適正といえるのか。計画段階から住民の間で疑問の声が上がっていたのです」

171億円の立派な新庁舎

 新庁舎建設の経緯を県政担当記者が解説する。

「台湾積体電路製造(TSMC)の工場誘致の恩恵を受ける県北に対し、八代市がある県南は人口減少に喘いでいる。追い打ちをかけるように、16年には熊本地震が発生。20年の熊本豪雨では球磨川の大氾濫で死者4名、住宅147棟が全壊、160棟が半壊する甚大な被害を受けた。一方、市長肝煎りの“震災復興プロジェクト”として16年に総事業費約112億円でスタートした『新庁舎建設計画』は、17年に増床を理由に50億円を増額。さらに21年には、コロナ対策や軟弱地盤の発見を理由に約7.5億円が増額され、計画より約60億円も膨れ上がった」

 元八代市議の亀田英雄熊本県議が続ける。

「熊本地震で旧庁舎が被災したことから建て替えの検討が加速。推進派の市長や市議は、『国の災害復旧事業債や合併特例債で事業費の大半を賄うので市民の負担は少ない』と主張しましたが、復興予算を新庁舎に投入する判断に、『血税の使い方が間違っている』との批判は根強かった」

8月末の市長選で敗れた、中村博生前市長(写真は本人Xより)

 実は、推進派が押し切る形で進んだ新庁舎建設を巡っては、市民には決して明かすことのできないある重大な疑惑が潜んでいた。

 疑惑において、名前が浮上した重鎮市議、大手ゼネコン・前田建設工業の存在。内部文書も入手し報じている記事の詳細は現在配信中の「週刊文春 電子版」および2日発売の「週刊文春」で読むことができる。

次の記事に続く 《八代市“171億円市役所”問題》「99.92%の異常な落札率で受注」官製談合疑惑の“新証拠”入手!「記憶はない」疑惑の市議は関与を否定するが…