自民党総裁選の終盤情勢に異変が起きていた。序盤から小泉進次郎氏、高市早苗氏の2強構図が続いてきた党員票で、林芳正官房長官が急速に支持を伸ばしているのである。
「文藝春秋PLUS」の緊急特集で、JX通信社代表の米重克洋氏は興味深いデータを明かした。日本テレビとの共同調査によると、第1回調査で32%の党員支持を得ていた小泉氏は、第2回調査では28%に下落。そして第3回調査でも28%と横ばいに留まった一方、林氏は17%から23%へと6ポイントも急伸している。
(初出:「文藝春秋PLUS」2025年10月3日配信)
書き込み要請問題で勢いに陰り、石破票の取り込みに失敗
この変化の背景にあるのが、小泉氏陣営のいわゆる「ステマ疑惑」である。支援者にSNSでの書き込みを要請していたとされる問題が報じられたのは、まさに第2回調査の直後だった。
「本来小泉さんが取りたかった延びしろが取れなくて、林さんに流れた」と米重氏は分析する。特に注目すべきは、前回総裁選で石破茂氏に投票した党員の動向だ。当初は4割が小泉氏に、2割が林氏に流れていたが、現在では「小泉さん、林さん、ほとんど同じぐらいの割合しか流れていない」状況になっているという。
党員票の特徴について、米重氏は普通の選挙との違いを指摘する。「目移りをするというのがまず大前提」とし、「最初は小泉さんがいいと言っていた人でも林さんになるとか、最初は高市と言っていた人でも小泉さんになるとか、こういうスイッチが簡単に起きる」と説明した。
党員離党問題も追い打ち、安全運転戦略の限界
さらに追い打ちをかけたのが、9月30日に週刊文春が報じた神奈川県連での党員離党問題である。ただし米重氏は、このタイミングでの報道について「9月30日ということになると、かなりその投票が終わっている時期の報道」として、党員票への直接的影響は限定的との見方を示した。
