10月4日に投開票される自民党総裁選が間近に迫る中、「文藝春秋PLUS」の緊急特集で、JX通信社代表の米重克洋氏が興味深い分析を披露した。

 日本テレビとの共同調査をもとに、高市早苗氏が展開している戦略について「政策的な軌道は中央になるべく寄せながらも、そのナラティブでは右側、右奥に手を伸ばしていくという、こういう戦い方なのかなと思う」と解説。党員票と議員票という異なる有権者層に向けた、巧妙な「二刀流戦術」の実態を明かした。

(初出:「文藝春秋PLUS」2025年10月3日配信)

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高市早苗氏 ©時事通信社

靖国参拝「明言しない」戦略的判断

 米重氏が特に注目したのは、高市氏の靖国神社参拝に対する姿勢の変化だ。「政策的にその中央軸に寄せるということでいうと、一番分かりやすい例は、靖国神社への参拝を明言しないということです」と指摘した。

 この背景には複雑な外交事情がある。「要はその今の日本の総理大臣が、その韓国との関係性で見た時に、やはり靖国神社に公式に参拝をするということになると日韓関係に亀裂が入る」と米重氏は説明。さらに「日韓関係というのは別に日本と韓国の間だけの問題ではなくて、日米韓で連携をして中国、あるいはロシア、北朝鮮といった勢力と対抗していくという意味で非常に重要な日本の外交の軸になっている」と、より大きな戦略的文脈での重要性を強調した。

党員向けには「右派アピール」のナラティブ

 一方で、より一般の党員に向けては別のアプローチを取っているという。米重氏は「やはり一般の方に近い、世論の意見に近いような部分に関してはなるべく右側で響くような言葉を使っていく」と分析。「それが例えば外国人の話だったりとか、多分そういうアプローチになってるんだと思う」と具体例を挙げた。

 この戦術について、米重氏は「党員票の方にそういった政策の中心軸から外れずに、なるべく右に響くようなナラティブを発信をしていくって、ここは非常になんか明確な意思があると思う」と評価。さらに「決してその政策の軸がずれるような、軌道からずれるようなことは言わないようにしようっていう配慮も、これはやっぱり政治的にはすごく感じられる」と、その巧妙さを指摘した。