『Mr. ノーバディ 2』
本作も、『ローズ家』と同じく娘と息子、2人の子どもを育てる夫婦の話だ。
家族から疎まれる父親が、実は暴力の化身のような元エージェントだった――という1作目の設定は、多くの中年男性に夢を与えたことだろう。ただ、この手の映画は出オチ的な側面があるため、2作目は難しい。「観客は主人公がどこまで強いのかがわからない」「家族は父親の正体を知らない」――という1作目の面白さを支えた魅力は、もう使えなくなるからだ。そうなると敵を強大にするしかなく、結果としてただ大味になりがちだ。
そのため、本作を観る前は不安があったが、いい意味で驚かされた。「この手があったか!」と。
1作目の最後で闇組織の軍資金を燃やしたことで、父親は裏社会の仕事で借金を返済し続けていた。が、そのために家族を構っていられなくなり、関係性は再び冷え込んでしまう。そこで思い切って長期休暇をとり、子ども時代に楽しんだリゾート地に家族を連れていく。が、今度はそこで地元の闇組織とのトラブルに巻き込まれる。
驚いたのは、家族が完全に父親の本性を受け入れていることだ。むしろ、心から頼もしく感じてすらいる。そして、そのことが家族それぞれに少なからず影響を与えてもいる。1作目が「真っ当に生きている家族との暮らしを維持するために苦労する異常な父親」だったのに対し、今度は父親だけでなく家族のみんなが何らかの形で一線を越えてしまっているのだ。そのため、敵組織との闘争に入った際の家族の団結感は強固なものになっており、それこそが本作最大の魅力といえる。父親の戦いはもう孤独なものではなく、「ファミリー・ビジネス」のようですらあるのだ。
敵の描き方ではなく、家族の描き方を工夫する。この手法なら、子どもたちの成長やライフステージの変化によって内容にバラエティをつけられるため、シリーズを重ねてもマンネリ化やインフレ化は起きにくくなる。
バイオレンス版『北の国から』ともいえる、家族の歳時記的なシリーズへの発展を予感させる一本に仕上がっていた。
『Mr. ノーバディ 2』
監督:ティモ・ジャヤント/出演:ボブ・オデンカーク、コニー・ニールセン、ジョン・オーティス、RZA/原題:NOBODY 2 /2025年/アメリカ/90分/提供:ユニバーサル・ピクチャーズ/配給:東宝東和/©2025 Universal Studios. All Rights Reserved./10月24日(金)ロードショー
