男性の場合、思春期に友人関係が大きく変質する
こうした「理想の男性」像は日本だけではなく、世界にも共通するところがある。ニューヨーク大学のウェイ教授(心理学)は少年期から青年期にかけてのアメリカ人を追跡調査し、思春期にその友人関係が大きく変質することを突き止めた。幼少期から少年時代にかけては、女の子と同様に同性の友人たちと深く、緊密な関係を築いていたのに、青年になるにつれて、そうした結びつきをあえて遠ざけるようになってくる。心の奥底では親しい関係性を継続したいと思っているが、「男同士で群れることは男らしくない、ホモセクシュアル的である」という社会通念や価値観に押しつぶされてしまう、とウェイ氏は分析している。
アメリカでいえば、「カウボーイ」のような「ローンウルフ」(一匹狼)が「男らしい」とされるわけだが、「男は自立し、ストイックであるべき」という「マッチョ」信仰が、男性を孤独へと追いやる導火線になっているわけだ。
「孤独が男を鍛える」。こういった「神話」は広く日本に浸透しており、例えば、「男」と「孤独」でネット上で検索すると、「かっこいい」「もてる」「魅力」などといった連想ワードが登場する。孤独に関する本といえば、「孤独が男を作る」「孤独が一流の男を作る」「孤独が男を強くする」「孤独のすすめ」「孤独の力」「孤独が君を強くする」など、「礼賛型」ばかり。もちろん、だれにとっても、時に一人の寂しさに耐える力は重要だ。自分だけの時間の中で、人は思索をし、鍛えられる。しかし、だからといって、孤独を過度に美化し、結果的に社会から隔絶されることは前回の記事でもご紹介したように、実はとても危険だ。
仕事以外で全く人付き合いをしない「仮性孤独」を続けるリスク
日頃、「煩わしい」と仕事以外で全く人付き合いをしない「仮性孤独」を続けていると、定年退職後、20年も30年も、ほとんど、人に会わず、話さず、心を通わせることがない「真性孤独」に陥るリスクが高い。仕事以外の人付き合いがほとんどなく、妻が唯一の社会との窓口という「妻依存」男性も増えているが、そういった男性は、妻に疎まれたり、妻を失えば、社会から孤立してしまう。