参政党のスローガン「日本人ファースト」に端を発して、国政の課題となった外国人政策。外国人受け入れ政策の見直しに向けた報告書を公表した、鈴木馨祐・法務大臣が、日本独自モデルを提言する。

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〈自民党総裁選で、前回はほぼ議論されなかった「外国人政策」が大きな論点となり、次期政権で重要な政策課題となるのは、ほぼ確実だ。そんななか、8月29日、出入国在留管理庁を所管する法務省の鈴木馨祐大臣が、外国人受け入れ政策の見直しに向けた報告書(「外国人の受入れの基本的な在り方の検討のための論点整理」)を公表した。

 従来の外国人受け入れ政策について、「対症療法的」で「中長期的かつ多角的視野に立った統一的な方針が存在しない」と手厳しく批判し、法務省の所管領域を超えて政策の見直しを求めるかなり踏み込んだ内容だ。

 外国人政策は、7月の参院選以降、「日本人ファースト」を掲げる参政党の躍進でにわかに注目されたが、鈴木氏は参院選以前の2024年秋の法相就任当初から、「先進国では移民・難民を含む外国人の受け入れが政治の最大の焦点」という危機感をもち、2025年2月に、今回の報告書につながる私的勉強会を設置したという。報告書は、当初、一大臣による私的勉強会の成果にすぎなかったが、最終的に「政府方針」に近いものとして公表された。

 どんな問題意識から報告書を作成したのか。鈴木法相に話を聞いた。〉

鈴木馨祐氏 Ⓒ時事通信社

提示した「7つの観点」

 私自身の問題意識は、最も厳しいケースを想定し、早めに政府が対応しなければ取返しがつかないことになるというものです。勉強会のメンバーの名前は明かせませんが、マクロ経済学者、外国人受け入れの国際比較の研究者、社会統合の問題に詳しい社会学者、現場を知る自治体職員など、各分野の専門家に集まっていただき、約10回会合を重ねました。その上で法務省内でも相談しながら作成したのが、今回の「論点整理」です。外国人が社会に与える影響について、出入国および在留管理の観点だけでなく、複数の観点から中長期的かつ多角的な検討が必要だとして、次の七つの観点を提示しています。

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 (1)経済成長の観点(継続的な経済成長のため、将来的にどの程度の外国人を受け入れることが適切か)

 (2)産業政策の観点(どのような産業・業務にどのような外国人がどの程度必要か)

 (3)労働政策の観点(どのような外国人をどの程度受け入れることにより、国内労働市場にどのような影響があるか、受け入れた外国人に適切な労働条件が確保できるか)

 (4)税・社会保障等の観点(どのような外国人をどの程度受け入れることにより、税・社会保障制度にどのような影響があるか)

 (5)地域の生活者としての観点(外国人が地域社会に与えるさまざまな影響などを踏まえ、外国人を地域の生活者としてどのように受け入れていくか)

 (6)治安の観点(外国人を受け入れることにより治安にどのような影響を与えるか)

 (7)出入国及び在留管理の観点(従来の在留資格制度の趣旨・経緯を踏まえつつ、今後も増加が見込まれる在留外国人数を考慮し、出入国および在留管理の基本的スタンスを維持すべきか、一定の受け入れ上限数などを設定すべきか、在留資格制度はどうあるべきか)