かりんこ 私に馬乗りになって全体重をかけながら、思いっきり首を絞めてくるんです。息ができないし、目が飛び出て顔が破裂する、と思いました。あのときは、本当に殺されると思いましたね。

 そして意識が遠のいていく中で、失禁をしてしまって。その時に「このまま死んだら、漏らした姿をいろんな人に見られるんだ」と思って、急に恥ずかしくなったんです。

 それで、近くに転がっていたフライパンを掴んで、彼を殴ってなんとか手を振りほどくことができました。

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『お気楽ポジティブ女の私がメンヘラ製造機になった話』より

――その後、彼はどんな様子だったのでしょうか?

かりんこ 殴られた痛みとショックで、放心していました。その横で、私は失禁の後片付けをして、救急車と警察を呼んで。私の首はうっ血してどす黒くなって、右目の白目の部分が真っ赤に充血していました。

「とにかくみんな外面が良い」なぜ恋人たちはモラハラやDVをしてくるようになったのか

――これまで壮絶な恋愛経験をお聞きしてきましたが、それを踏まえて、モラハラやDVをしてきた過去の恋人たちにはどんな共通点がありましたか?

かりんこ 一番の共通点は、「自分が相手に抱く愛情と同じくらい、もしくはそれ以上の愛情を相手に求めること」ですかね。だから、相手の「好き」が見えないとイライラする。

 あとは、とにかくみなさん「外面が良い」。だから、私が彼らのモラハラを周りに訴えても、「まさかあの人がそんなことするわけない」「かりんこさんが何か悪いことしたんじゃない?」と言われてしまうことも多いんです。

――社会的にも信頼されている人が多かったのでしょうか。

かりんこ そうですね。仕事もできるし、コミュニケーション能力も高い人が多かったです。

 その分、抱えているストレスもすごいのかなって。だから、身近な相手に癒やしてほしい、分かってほしいと思って、それが叶わなかったときにモラハラやDVをしてしまうのかな、と思っています。

 

「あの頃の私は誰かに求められたくてしょうがなかった」

――そんな彼らに、なぜかりんこさんはターゲットにされてしまったのでしょうか。

かりんこ 私、わりと厳しめの家庭で育ったんですよ。抑圧されることには慣れているから、良くも悪くも我慢強いんです。彼らは、それを感じ取っていたのかもしれないですね。

 あとは、半分ふざけた話なんですけど、私、ジョニー・デップが大好きなんです。日本人でジョニー・デップのような方って、あまりいないじゃないですか。だから、良くも悪くも、容姿で心を動かされることがないんです。それが、「この人は、見た目や肩書じゃなく、自分の中身を見てくれる」と勘違いさせてしまったのかもしれません。

――その結果、命の危険を感じるような場面も何度かあった。

かりんこ 「恋愛がよく分からない」と言うわりには、危険な目に遭っても恋人を作り続けるなんておかしな話ですよね。でも、あの頃の私は誰かに求められたくてしょうがなかったんですよね。誰かに「好き」と言ってもらうことで、自分は社会に必要とされる人間だ、だから生きてていいんだって思いたかったんです。

――なぜ、そう思うようになったのでしょうか。

かりんこ 先ほど少しお話ししたように、学生時代の「引きこもり」の経験が、大きく関わっていると思っています。

撮影=石川啓次/文藝春秋

次に続く 「恋愛感情がないのに付き合っていた」“モラハラ彼氏”にフォークで鼻を刺され、首を絞められ殺されかけた女性漫画家が、それでも恋人を作り続けたワケ