細胞移植治療を上回るメリット
――人工多能性幹細胞(iPS細胞)や胚性幹細胞(ES細胞)などから新たな細胞を作って移植する細胞移植療法の開発も進んでいます。細胞移植治療と比較したとき、プリマの主な利点は何でしょうか。
端的に言えば、「実際に機能する」ということです。プリマは、(光を感じる)桿体(かんたい)細胞や錐体(すいたい)細胞が死んでしまったけれど、視神経や網膜は残っていて、脳も「見る方法」をまだ覚えている病気に有効です。
網膜の病気では、光受容体のシートを移植したり(体内に元々ある)幹細胞を注入したりする試みが行われていますが、それらの細胞が正しく神経回路を形成し、視覚を生み出すと証明されたことは、私の知る限り一度もありません。臨床試験で細胞が生着したことを示す論文はあっても、ヒトで実際に視覚を取り戻せたという報告はまだないのです。
例外的に成功した例としては、眼内に細胞を注入して、視覚の劣化を少し緩和する治療はあります。しかし、それは注入された細胞が、神経回路を形成するのではなく、残っている桿体や錐体にとって有益な化学物質を分泌することによる効果です。
来夏にも欧州で販売開始
――プリマの実用化に向けた手続きが最も進んでいるのは欧州ですが、発売されるのはいつ頃になりそうですか。
私たちの希望では来年の夏です。現在、承認審査中で、最終的には規制当局の判断次第ですが、審査は進んでいます。米国のFDA(米国食品医薬品局)とも協議中です。
※本記事の全文(約4500字)は、月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」に掲載されています(須田桃子「加齢黄斑変性患者に光明……網膜の下にチップを入れて視力回復が可能に」)。記事ではこの他にも、プリマの米国発売の時期、他の目の難病にも適用できる可能性、現在開発中の新たな遺伝子治療などについても語られています。

