「タクシー会社でして。やはり総務的な事務処理と出納業務のアシスタントを兼務しています」
人手不足のお陰なのか時給はコロナ禍前に比べ40円上がり、初めて1500円になった。かなり忙しいようで休みは4週6休、1か月の出勤日数は24日あるので月収は約29万円。実家暮らしなので生活に不自由はない。
「独り身で職は不安定、将来も見えない」
「今はタクシードライバーさんが不足しているそうです。管理職の方から、二種免許取得の支援をするからやってみる気はないかと打診されました。マニュアル車の免許は持っているけど年に3、4回レンタカーを運転するぐらいだから、怖くて無理です」
エースドライバーと言われる人は600万円ぐらいの年収だということだが、都内の地理さえよく分かっていないのだから、自分には務まりそうもない。
「離婚してからずっと実家に身を寄せているので家賃などの出費はない。これは助かるけど劣等感はありますよ。独り身で職は不安定、将来も見えないから」
最近は50歳という年齢が重たく感じる。
「テレビ番組で人気女優が、お母さんは48歳と話していたり、就職した男の子が初めての給料で両親にプレゼントしたというレポートで、父親が52歳で母親は50歳だというのを見るとショックですよ。自分にも成人した息子娘がいてもおかしくないのだから」
たまに回ってくる回覧板の訃報で、亡くなった人の年齢が40代後半から51、2歳ということもあり、自分もいつ何があるか分からないと不安になってしまう。
「50歳って精神的にガツンと来ますね。そうか、人生の後半なのよねって思います」
こんな富永さんのことを心配してお兄さんが再婚の話を持ってきた。