営業職は「どこでも通用する」と信じていた。しかし、介護による7年のブランクの末に職場へ戻った48歳の御厨謙さんを待っていたのは、現実の壁だった。
テレアポ、葬儀会社、自販機補充など働いても働いても、わずか数日でクビになる。「自分には何もできない」とつぶやいた彼の姿は、いまや誰にでも起こりうる“キャリア断絶社会”の象徴だ。そんな再就職にともなう困難を、新刊『キャバクラ店員へとへと裏日記』(鉄人社)より抜粋して紹介する。(全2回の2回目/最初から読む)
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死体洗い、遺品整理清掃。高額バイトを探したが…
ネット求人、コンビニに置いてあるアルバイト求人誌、新聞の折り込み求人と思いつくままアルバイト求人に当たってみることにしました。
しかし僕にはできそうにないというか、能力的に無理なものが多かったです。
まず、体力がないので肉体労働ができない。(ホームヘルパー二級を除いて)唯一の資格の運転免許も自家用車の乗りなれた小さい軽自動車しか運転できない。
おまけにパソコンは苦手だしと、求人を見れば見るほど、自分のふがいなさに嫌気がさしました。
〈僕は48歳にもなって何もできないんだな…〉
営業は潰しがきくと言われて営業畑ばっかり歩いてきたのですが、今となっては、足かせにはなっても、何の役にも立たないことに気づかされました。
相手に取り入り、契約を取ってくる営業職は、特別な技能を必要としないぶん、『営業しかできない人間』と見なされてしまうことも多いからです。
〈ホームヘルパー二級の資格を使えばいいのかもしれないけど、せっかく母の介護から解放されたのに、また介護の現場で働きたくないしな〉
このころは少しノイローゼ気味になっていたのか、やけくそで職探しをしていました。
思えば、ネット求人で、死体洗いバイト、遺品整理清掃なんていうワードも検索したような覚えがあります。
