――この本の中でも、女性関係のスキャンダルの取材に来た週刊誌記者を自宅に招き入れて、お茶とお菓子を出してもてなしていたという話がありました。
しんいち はい、『週刊文春』の記者の方に自宅の前で直撃されたので、僕も腹くくって、自分がやったことやからしゃあないか、と思って、ウソなしで全部しゃべったんですよ。そうしたら「我々記者を自宅に招き入れてくれた方は初めてです」って感激されて。
その後に記事を読んだら、ちょっと面白く見える感じで書いてくれた気がしたんです。やっぱり記者の人も人間だから、真正面からちゃんと向き合って話をしたらわかり合えることもあるんですよね。人間好きで良かったなと思いました。
「本音では、センスの良い芸人を目指す若手がもっと増えろ、と思ってます」
――本の中で、芸人がかっこいい存在になっていることへの違和感を表明していたのも印象的でした。
しんいち 今は『M-1グランプリ』がスポーツの大会みたいになってますからね。オープニングのVTRもかっこよすぎるじゃないですか。そういうのを見て、夢を追いかけて芸人になる若い子がいっぱいいるんですよ。
それはそれでいいねんけど、それが多すぎるなと思っちゃうんですよね。うちの事務所に来るのも90%ぐらいがそういう子ですから。センスがあると思われたい人が多すぎるな、って。芸人ってもともとそんなかっこいいもんちゃうぞ、って思うんです。
――しんいちさんのようになりたい、という子はいないんですか?
しんいち いるわけないでしょう! もともと芸人って、「ちゃんと勉強せんかったら芸人になってまうよ」って親が言うようなものだったじゃないですか。僕はそれで良かったのに、なんでこんなに芸人がかっこいい職業になっちゃったんだろう、って思うんですよね。だから僕だけは、芸人ってめっちゃヤバい仕事だよっていうのを広めていきたいんです。そういう使命感はあります。ただまぁこんなことを言いながら、本音ではセンスの良い芸人を目指す若手がもっと増えろ、とも思ってます。そういうやつばっかりになれ、って。
――どうしてですか?
しんいち そうなればなるほど僕を脅かす人間が少なくなるから。
『水曜日のダウンタウン』とか見てても、いつまでこのメンバーで行くねん、って。僕、いぐっちゃん(ウエストランド・井口)、みなみかわさん、(ダイアンの)津田さん、みんな40代のおじさんで。(きしたかのの)高野が「新星現る」みたいに言われてますけど、36ですからね。次が出てこないから僕らがずっとやらなきゃいけない。いぐっちゃんとかと愚痴ってるんですけど、内心ではありがたいと思ってます。
――しんいちさんの芸風だと、視聴者から見下されたり批判されたりすることも多いと思いますが、それも気にならないということですね。
しんいち 共演者とかスタッフさんとか、一緒に仕事をする人には好かれたいですし、みんなでいいもん作りましょう、とは思ってます。でも、視聴者には100%嫌われたいというバランスでやってます。
僕、ネットニュースのコメントとかもめっちゃ見るんですよ。その中で「しんいちって最近テレビでよく見るけど、何が面白いのか私にはわからない」「しんいちは見てるだけで不快だ」っていう言葉が僕の中で正解なんです。嬉しいというか、合ってますよ、それでいいです、っていう感じです。
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