韓国・慶州で行われ11月1日に閉幕したAPEC首脳会議。高市早苗首相が日本の国旗と韓国の国旗(太極旗)に一礼したことが韓国で大きな話題となっている。これまで高市首相は、韓国でどのように見られてきたのか。現在の印象は? 在韓ジャーナリストの金敬哲氏が寄稿した。

11月1日、APEC首脳会議の集合記念撮影時に李在明韓国大統領と挨拶をする高市早苗首相 ©EPA=時事

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 高市早苗首相に対する韓国の最初の反応は、憂慮と警戒だった。日韓の懸案である歴史問題や領土問題などに対してタカ派の姿勢を見せてきた高市氏は、韓国メディアと国民の間では「『女性版・安倍』と呼ばれる“極右”政治家」と認識されてきたためだ。

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“史上最悪の日韓関係”2021年の総裁選をきっかけに注目

 高市氏が韓国で名前が知られたのは2021年の自民党総裁選からだ。当時、韓国は、文在寅(ムン・ジェイン)政権による2015年の日韓慰安婦合意の(事実上の)破棄を皮切りに、安倍政権と強く対立し、史上最悪の日韓関係が続いた。

 両政府の対立は両国国民にも多大な影響を及ぼし、韓国では「ノージャパン」運動が拡散。街のあちこちでは、日の丸や安倍首相(当時)の顔写真を破るなどといった、過激な反日パフォーマンスが繰り広げられた。

 安倍氏が、自身の退陣後は総裁選で「理念が似ている」高市氏を支援するというニュースに、当時韓国メディアは緊張した。

2020年、安倍首相(当時)の辞任会見の様子を見る韓国市民 ©AFLO

〈「初の女性首相」候補となった高市氏は、強烈な極右の色彩を帯びています。極右的な政治的指向のために、「初の女性総理」というタイトルが似合わないし、「女性」というアイデンティティとも無関係だという批判まで一部から出てくるほどです〉(KBSニュース「『特派員リポート』 安倍が推す『高市』は日本の極右の顔になれるのか?」2021年9月28日)

 「極右」「女性版・安倍」と知られる

〈総裁選挙への出馬を明らかにした3人の候補のうち、高市氏は安倍首相と理念の傾向が最も似ている人物に分類される。安倍首相と同じ1993年7月の総選挙で初めて当選した高市氏は、日本会議国会議員懇談会、神政連国会議員懇談会、みんなで靖国神社を参拝する国会議員の会、創生「日本」の代表的な4つの右翼団体にいずれも名を連ねている。日本の教科書に掲載された日本軍慰安婦関連問題の内容に不満を抱いた安倍首相は、当選2回の議員時代の1997年、「日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会」を作り、事務局長を務めたが、高市氏もこの会に参加した安倍首相の「同志」だった」(聯合ニュース「『安倍の同志』高市氏、『電磁波で敵基地を無力化』2021年9月11日)

 その後、韓国では「極右」「女性版・安倍」という呼称で通ってきた高市氏。ついに日本の首相に就任すると、韓国の主要紙は10月22日付の社説で一斉に強い憂慮を示した。