藤本美貴との“本当の関係”

「完璧主義」だった現役アイドル当時を見ていて意外に思ったのは、石川はネガティブで自虐的だが、言いたいことを言わずに溜め込む陰キャラではなかったことである。後輩には特に、悪いと思うところはズバリ本人に指摘する厳しさを持っていた。そのため、グループ内では「小姑」といった風情だったようだ。

 年下の同期で、まだまだ子供でヤンチャな辻希美と加護亜依には石川が注意することも多く、二人からは苦手だとされていた。6期の亀井絵里や道重さゆみにも「メンバーで一番怖いのは石川さん」と言われてしまう。全体的に、人に怒ったり注意するのがうまくはないのに、損な指摘役も一手に引き受ける、真面目で不器用な性格が見える。

石川の後輩“プラチナ期”に当たる「モーニング娘。コンサートツアー2010秋」最終日。(手前から)亀井絵里、光井愛佳、道重さゆみ、ジュンジュン、田中れいな

 2003年から2005年にかけてダブルセンターとして活躍した6期の藤本美貴との関係もとても興味深い。

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 グループの規律を一番に考える優等生気質の石川梨華。一匹狼の藤本美貴。どう考えても合わない。二人の価値観の間にはナイル川くらいの隔たりがあるように見えたし、実際、不仲エピソードもたくさん流れてきた。

 しかし、2011年6月に藤本が「梨華ちゃんと初めて」と題し、「勇気をだして梨華ちゃんにTEL」とブログで報告。共通の友人と食事に行き、語り合ったことが書かれている。これには「藤本美貴と石川梨華 歴史的和解」とX(当時Twitter)で大きな話題となった。

 ブログではちまたでの噂=不仲説にも触れ、「メンバーの中では小姑と言われる梨華ちゃん メンバーやファンの中では美貴様と呼ばれる私 私と梨華ちゃんとの間にある ちまたでの噂 そのままにしといてもいっか」と絵文字とともにユーモアたっぷりなこの文面を読むと、外側からは分からない、メンバーの絆があるのだとつくづく感じる。

「ドリーム モーニング娘。」を結成(2011年1月撮影) ©時事通信社

 藤本が、何をきっかけにして石川に連絡を取ろうと思ったのかさだかではない。が、実は、彼女はつんく♂との対談で、「反抗期を脱した転機」について聞かれると「モーニング娘。がさくら組とおとめ組で別れた時」と答え、「メンバー割りを見た時に、さくら組には安倍(なつみ)さんがいて、おとめ組には(石川)梨華ちゃんと私がいて、『私も頑張らないと負けちゃう!』って思ったんです。すごく負けず嫌いだから『反抗期をやってる場合じゃない。本腰を入れて、ひとつになって頑張ろう』と思えたんですよね」(「つんく♂の超プロデューサー視点!」2023年11月1日)と語っている。

 石川の名がぱっと出るあたり、価値観は違ったがその存在感と実力は認めていたのだろう。