保護区域周辺に迫るチェーンソーの音
2025年夏、私たちは再び、マドレ・デ・ディオス州の森の中にいた。4カ月に及ぶ交渉を経て、伐採業者である「カナレス・タフアマヌ社」の伐採現場への同行が許されたのだ。イゾラドに影響を及ぼしていると見られる、彼ら伐採業者の実態を取材するのが目的だった。
本社の所在地・イニァパリを午前4時に出発した私たちは、6時間のロングドライブを経て、今年伐採を進めるエリアに到着。そこはまさに保護区域に隣接するエリアだった。この会社では、乱伐採を防止するために、事前に現地を調査し、樹種や木の太さなど法律に基づいて伐採可能な木を選定。GPS付きの地図に落とし込んだ計画書を政府に提出した上で伐採しているという。伐採は2人組の作業員によって進められる。
多い日で1日に7、8本の大木を切り倒していく。まとまった数の木が伐採されると、大型の重機が登場。重機は、切り倒された木の場所まで一気に細い木や草をなぎ倒し、道を形作っていく。木材の集積所には、製品となる太い木材とともに、おびただしい数の細い木や枝が積み重ねられていた。
取材で出会った作業員は、マドレ・デ・ディオス州の州外から、出稼ぎでやってきたという。イゾラドについて質問した私たちに、「イゾラドについて聞いたことはあるが、よく分からない。怖いかって? 怖がっているのはあいつらだ」と答えた。
アマゾン奥地の一帯の伐採が始まってから20年。道路は延び続け、保護区域は自動車でたどり着ける場所になった。そのことは、イゾラドと彼らの間に衝突を生じさせていた。
「現場に散弾銃が2丁あった」“報復”のきっかけとは
2年前、カナレス・タフアマヌ社の作業員が伐採地の近くでイゾラドと思われる人たちからの襲撃を受け、2名が死亡する事件が起きた。さらに2024年8月、同じく保護区域に接する森の中で、伐採をしていた作業員が襲われる事件が発生。2名の遺体が発見されたが、残る2名はいまだに行方不明だ。現場検証に参加したモンテ・サルバードの保護官は、“現場で柄の部分に血液が付着した弓矢を目撃した”と証言した。
血の付いた弓矢が示すこと――。それは、伐採業者側がイゾラドに対して、銃を発砲した可能性だ。実際に現地捜査を指揮した警察官は、「現場に散弾銃が2丁あった」と答えた。
ロメルは言う。
「突然、現れたイゾラドに対し、伐採業者は襲われる恐怖から発砲したかもしれない。その報復でイゾラドは矢を射ったのではないか。イゾラドにも死者が出ているかもしれない。彼らが現れた時、どうすればいいか考えるために対話をしなければいけない……」

