文明社会と接触したことのない、未知なる人々「イゾラド」。2024年10月、南米アマゾンの深い森の奥に暮らす彼らが大集団で10年ぶりに現れた。さらに、10年ぶりに現れた彼らの様子は、大きく変わっていた。森に、そしてイゾラドに一体何が起きているのか。

 10年前に現地を訪ね、イゾラドの姿を撮影・記録したNHK取材班は、再びアマゾンに渡り、イゾラドを取り巻く環境の変化を記録した。

 目の当たりにしたのは、アマゾンの奥地にまで押し寄せる文明社会の膨張。私たちの営みが、原初の生活様式を守ってきた彼らの暮らしを破壊し始めている現実だった。(全2回の1回目/後編に続く

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2024年10月に現れたイゾラド ©NHK

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10年ぶりに現れたイゾラド

 イゾラドをめぐる取材の舞台は、南米・ペルー東部に位置するマドレ・デ・ディオス州。19世紀の終盤から日本人が移住し、コミュニティを形成したといわれ、現在の州知事も日系人が務めるなど、日本にゆかりのある場所だ。

 2024年11月、首都のリマを経由し、空路、州都であるプエルト・マルドナードに取材班は到着した。

 実はその数日前、イゾラドに関する衝撃的なニュースが飛び込んで来た。イゾラドが100人を超える集団で現れ、集落の人に矢を放ったというのだ。住民たちは、集落からプエルト・マルドナードへの緊急避難を余儀なくされているという。私たちは早速、イゾラドが現れた集落「モンテ・サルバード」の村長であるロメル・ポンセアーノの元を訪ね、話を聞くことから取材を開始した。

「あの日の午前10時ごろ、ひとりの女性の声が聞こえた。“イゾラドが来た”と」

 先住民、イネ族に伝わる伝統文様の入ったTシャツに身を包んだロメル・ポンセアーノ。普段は人なつこい笑顔が印象的なロメルは、集落で起きた出来事について話し始めた。

モンテ・サルバード村長のロメル・ポンセアーノさん ©NHK

 2024年10月21日、集落の対岸に現れたというイゾラド。村長のロメルたちがいくつか言葉を投げかけてみたところ、集落で使われてきたイネ族の言葉の一部が通じたという。そこで、ロメルを中心に住民たちはイゾラドの食糧であるバナナを準備、ボートに積んで提供した。バナナを受け取り、落ち着いた様子になったイゾラドは、6時間のやりとりを行った後、一度は森に戻っていった。久しぶりに現れた彼らとコミュニケーションを図れたことに安堵していた集落の住民だったが、その直後、衝撃的な光景を目の当たりにする。