文明社会と接触したことのない、未知なる人々「イゾラド」。2024年10月、南米アマゾンの深い森の奥に暮らす彼らが大集団で10年ぶりに現れた。さらに、10年ぶりに現れた彼らの様子は、大きく変わっていた。森に、そしてイゾラドに一体何が起きているのか。
10年前に現地を訪ね、イゾラドの姿を撮影・記録したNHK取材班は、再びアマゾンに渡り、イゾラドを取り巻く環境の変化を記録した。
目の当たりにしたのは、アマゾンの奥地にまで押し寄せる文明社会の膨張。私たちの営みが、原初の生活様式を守ってきた彼らの暮らしを破壊し始めている現実だった。(全2回の2回目/最初から読む)
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「ムカチリ(服)を着た人が悪い」
川を奥へ奥へと遡ること3日。取材班は、イゾラドが現れた最果ての集落「モンテ・サルバード」に到着した。集落では男たちがパトロールを行っていた。なぜ、イゾラドは自分たちに矢を射ってきたのか。集落の村長であるロメル・ポンセアーノには、イゾラドとのやりとりで気になっていた言葉があったという。
「ムカチリ」。「服」を意味する先住民の言葉だ。実は、イゾラドはロメルたちとのやりとりの中で、何度も、このムカチリという言葉を使ったという。「ムカチリ(服)を着た人が悪い」「お前たちはムカチリを着ているから悪いやつだ」と繰り返し訴えてきたというのだ。
ムカチリを着た人とは誰のことを指しているのか。答えを求め、ロメルたちと共に森に分け入り、集落の男性が矢で襲われた現場に向かうと、近くにイゾラドが滞在していたと思われる場所を発見した。
椰子の葉っぱを突き刺して作った簡易な寝床のキャンプ跡、そこに「ムカチリを着た人」の手がかりとなる、ある物が残されていた。
アルミ製の薄い鍋。近年、この周辺の森で活動する伐採業者が野営地で使用していると言われる鍋と同じタイプのものだという。持ち運びやすく安価なことから、業者が森で頻繁に使用するという鍋。どうやら、彼らと接触したことが、イゾラドが攻撃的な態度を取るようになったことと関係しているというのだ。
いったん集落に戻り、イゾラドが現れないか、対岸を見つめ続ける私たち。結局、最初の取材期間(2024年)に彼らのリアルな姿を記録することはできなかった。しかし、次なる取材の方針が見えてきた。

