イゾラドとの対話に同行取材
イゾラドとの衝突を避けるために、この1年、ロメルがそのヒントを求めて通う場所があった。それは、モンテ・サルバードから南へ100キロに位置する監視所。ここで、10年前に出会ったイゾラドのグループと接触を続けているというのだ。10年前に同じイゾラドのグループを記録したNHK取材班は、2025年8月、ロメルに再び同行することにした。
その初日。ボートで監視所に向かう途中のことだった。
「ノモレ(親戚)! ヨトロトル(カワウソ)だよ」と対岸に向かって呼びかけ始めたロメル。その視線の先を見ると……。イゾラドが森の茂みの中から川の対岸に出てきたのだ。「弓矢を置いて。傷つけないよ」と呼びかけるロメル。数えると8人。大人はすべて女性で、子どもも連れていた。
10年ぶりにカメラで撮影されたイゾラドだった。直接、接触できるのはロメルたち保護官だけ。予めウェアラブルカメラを着用してもらい、イゾラドと彼らとのやりとりを記録することにした。そして明らかになった、彼らに生じていた大きな変化とは。
取材を通じて強く感じたのは、イゾラドの暮らしを脅かす、圧倒的なスピードで進むアマゾン奥地の環境の変化だったように思う。
ポータブルのWi-Fiアンテナの普及が進み、1年前は電波が通じなかった集落でも、Wi-Fi通信が可能になった。また、道路が通ったことで物流が盛んになり、森の奥地の集落でも冷たいビールが飲めるようになった。
子どもたちはスマートフォンでSNSやゲームに興じ、大人は動画ストリーミングサービスで海外の映画やドラマを楽しむ。そこで目にする新たなサービスや商品を望み、さらに多くの現金収入を求める。
こうした、人々の避けがたい「欲求」の連鎖がアマゾンの森の深部にまで到達し、圧力となり、それがイゾラドの暮らしをも変えさせている現実がある。
彼らはこれから、どこへ向かっていくのか。「それを決めるのはイゾラド自身だ」そう語ったロメルの曇った表情が忘れられない。

