リベンジ誓う2人の投手の意地と執念
もう1つ、後半戦の充実した戦いぶりの要因として欠かせないのが、平井克典投手、野田昇吾投手の安定感だ。彼らもまた、前半戦で苦汁を飲まされた面々である。どちらも昨季に結果を残し、今季は開幕時から勝ちパターンで起用されるほど信頼を得ていただけに、期待に応えられなかった悔しさ、汚名返上への思いは、とてつもなく大きかった。
特に2年目の平井投手は、セットアッパーという重要な役割を担っていた。自身の状態も、「特に悪くなかった」。だからこそ、なおさら、一時防御率5.82まで打ち込まれた現状が「しんどかった。どんな状況でも、試合はきますし、任された以上、逃げちゃいけない立場ではあったのですが、『また今日も、投げたら打たれるんだろうなぁ』と思うと、球場に行くのが怖かったです」。6月11日、ファーム行きを通達されると、もう一度冷静に立ち返り、抑えていた頃の映像と現状の自分を徹底的に比較。すると、「ボール1、2個分高いことが一目瞭然でした。今年は、去年より明らかにスピードが出ていることもデータで出ていて、自分の中で、『まっすぐで押せる。力で押せる』と、ちょっと勘違いしてしまっていた自分がいました。力任せで投げていた分、球も浮いていたんだと思います」。今一度、謙虚になり、「まずは、僕の基本である、まっすぐを低めに、丁寧に投げる」意識を取り戻すことに専念した。それが奏功し、6月22日に一軍再昇格してからは、完全復調。後半戦はここまで10試合に登板し、失点1、防御率1.00と抜群の安定感を披露し続けている。
また、野田投手も、オールスター前後では、防御率3.79と1.42と、良化は明らか。この2人の安定によって、チームもスムーズなゲーム運びができているのである。(数字はいずれも8月10日終了現在)
12球団屈指の打線を味方につけ、さぞや心強いのでは? と尋ねると、両投手から、賛同の声とともに、「その反面、悔しさもある」との、少し意外な回答が返ってきた。真意を、平井投手は次のように語る。「どうしても周りからは『野手に助けてもらっているチーム』と言われているので。だから、後半戦は『投手が助けている』と思われるような試合をしていきたい」。同様に、野田投手も「後半戦は(立場を)逆転したい」と闘志を燃やす。
8月3日の日本ハム戦で、菊池雄星投手が7回のマウンド2死を奪ったところで交代を告げられた。ベンチに戻り、グラブを叩きつけて悔しさを露わにした日本一左腕の姿に、指揮官は「あれぐらいあっていい。むしろ、嬉しいぐらい」だと、勝利への執念とエースのプライドを讃えた。6月、故障から復帰した背番号16は、きっぱりと言った。「4、5月と、本調子ではなくて、中継ぎ陣にも野手の方にも助けてもらって、勝たせてもらってきた。だからこそ、これからは僕がみんなを助けられるような投球をしたい」。
「このままでは終われない」「チームの優勝に貢献したい」。そんな、リベンジ誓う選手たちの意地と執念も戦力の1つに加わった西武。10年ぶりの悲願達成へ向け、勝利への渇望はますます高まるばかりだ。
※「文春野球コラム ペナントレース2018」実施中。コラムがおもしろいと思ったらオリジナルサイトhttp://bunshun.jp/articles/-/8362でHITボタンを押してください。
この記事を応援したい方は上のボールをクリック。詳細はこちらから。