TVドラマ「スクープのたまご」の原作者・大崎梢による最新スピンオフ短編「議員会館で昼食を」が面白い!

「スクープのたまご」で右往左往していた主人公の週刊誌記者・信田日向子が2025年現在、若手女性議員に取材することになったが……。

(『オール讀物』11・12月号に掲載。ウェブ「本の話」で期間限定全文公開中。

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「信田さんもね」―女性同士の意気投合も束の間⁉

「議員会館で昼食を」は、原作「スクープのたまご」の世界観をそのままに、異動から1年半が経過した主人公・日向子が成長した姿を描いている。冒頭は「一年生のお昼ご飯」という企画のために、今年当選したばかりの参議院議員・三村史佳への取材に議員会館を訪れる日向子。三村議員は秘書たちがいなくなった執務室で、男性秘書たちの会話を盗み聞きしてしまったと打ち明ける。

『お嬢さんのお守りはどうよ』『ある日突然、辞めると言い出すんじゃないかとひやひやだよ』『へそを曲げたら厄介だよね』『女性、若い、ハケン。こんなに売り出しやすいセンセイは貴重だよ。大事にしなきゃ』と笑いあう秘書たちの会話からは、男性優位の政界で若い女性議員は「お嬢さん」と呼ばれ軽く見られる現実が赤裸々に描かれている。

 週刊誌業界という男社会で働く日向子と三村は意気投合。「取材がうまくいった」とホクホク気分で会社に帰った日向子に、デスクから「その議員を通じて内部情報を探れ」と無情な指令が――。

女性初の総理大臣の新人時代⁉

 担当編集者は「この短編が完成したあとに高市早苗総理が誕生しましたが、彼女の新人時代を想像すると、物語に描かれた三村議員の姿とどこか通じるのではないかと思いました」と語る。物語の中で三村議員は「めいっぱい頑張ろうと思ってる。任期は六年。大事な六年よ。腹を据えて学んで、精一杯動いて形にする」と決意を語り、したたかに、諦めず、自身の政治家としての信念を貫く姿勢を見せる。

 社会問題のリアリティと、その現実の中を生きる主人公・日向子と三村議員が交わす会話は、切実な本音ガールズトークにも思えてくる。現実の政治ニュースと重ねて読むと、面白さが倍増するかもしれない。

「スクープのたまご」ファンはもちろん、ビビッとくる楽しい一編を探している人、ぜひこの機会に読んでみてほしい。

INFORMATION

ドラマストリーム「スクープのたまご」
主演 奥山葵
TBS系
毎週火曜 深夜0:58~ 放送中
※一部地域をのぞく。放送時間変更の場合あり
​NETFLIXにて第1話~最新話まで全話配信中

HP:https://www.tbs.co.jp/scoopnotamago_tbs/
TVer:https://tver.jp/series/srrmp728su

スクープのたまご (文春文庫)

梢, 大崎

文藝春秋

2018年9月4日 発売

スクープのたまご1 (BUNCOMI)

大崎 梢 ,市丸 いろは

文藝春秋

2025年9月16日 発売