映画好きの著名人がミニシアターで出会った「忘れられない一本」を語る人気コーナー。俳優の一色洋平が語る「思い出の映画」とは?
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父の書斎が映画館だった
東中野にある「ポレポレ東中野」には、何度「ここが日本で一番面白い映画館なんじゃないか!?」と思わせてもらったことか……そんな自分にとって、幼い頃から映画館といったら、脚本家をしている父の書斎でした。「これ借りていい?」と聞くと、父は執筆中でも必ず私のほうを振り返ってくれて「どれ?……うん、いいよ」と。ある時、「これ観てみなよ」と初めて父の方から勧めてくれた作品。それが『サボテン・ブラザース』でした。落ち目の俳優3人組が、久しぶりの映画オファーに心を躍らせ現場に向かうと、なんとそこは本物の山賊に襲われている村だったのです。撮影だと思っている3人と、村を救うヒーローが来てくれたと思っている村人たち。彼らのすれ違いに散々笑わされた後、決意新たに本物のピストルを手に取る3人を観て、幼心に痺れました。「面白かっただろ? ここに置いておくね」と、父が書斎棚の低い位置にビデオを置いておいてくれたことも忘れません。
いっしき・ようへい 1991年、神奈川県鎌倉市生まれ。確かな演技力、身体表現の豊かさで舞台、ドラマで活躍中。24年、鴻上尚史の処女戯曲『朝日のような夕日をつれて』、25年には音楽劇『愛と正義』『くるみ割り人形外伝』に出演。12月には、ローベルト・ゼーターラー作『キオスク』に主演する。
『サボテン・ブラザーズ』
1986年アメリカ/監督:ジョン・ランディス/出演:スティーヴ・マーティン、マーティン・ショート、チェビー・チェイス
ハリウッドでサボテン・ブラザースとして人気を博したトリオ。人気絶頂から飽きられて現在は落ち目でスタジオから切られてしまう。そんな彼らにメキシコからオファーが。しかし、そのオファーが本物の悪漢と戦うというものとは知らず意気揚々と現地に向かう……。
DVD 2,090円(税込)
発売元:キングレコード
サボテン・ブラザース


