「ドバイエアショーから逆算し独島(竹島)周辺で訓練計画」航続距離が短く過去には台湾で給油も
ブラックイーグルスは海外に出発する前、竹島周辺などの訓練空域で機動訓練を行い、万全を期すのが恒例になっていた。前出の韓国軍関係者は「ドバイエアショーから逆算して、独島(竹島)周辺での訓練を計画したわけで、首脳会談とは何の関係もない」と指摘する。
また、T50は航続距離が短く、「釜山からフィリピンまで飛行できない程度」(自衛隊元幹部B氏)という。途中で給油が必要で、過去には台湾で給油していた。ただ、その都度中国から激しい抗議を受けていた。このため、中韓関係を立て直したい李在明政権の意向もあり、沖縄での給油をお願いする方向になっていたという。自衛隊関係者は「ブラックイーグルスはドバイエアショーに参加したかった。当然、自分たちから日韓関係をぶち壊したい意図はなかったとみるべきだろう」と語る。
不幸なタイミングだったとも言えるが、韓国側にも考えが至らなかった点はある。自衛隊元幹部は「我々が尖閣諸島上空を飛ぶ場合、その政治的な影響は当然考える。常に政治的に中立であり、政治に影響を与えないようにするのが成熟した政軍関係だろう」と指摘する。すでに飛行計画があったとしても、日韓首脳会談の日程が決まった時点で、計画の変更を考えられなかったものか。
現場判断で政治を混乱させた2018年の「火器管制レーダー照射事件」
というのも、韓国軍には現場判断で政治を混乱させた苦い経験があるからだ。2018年12月、韓国海軍駆逐艦「広開土大王」による海上自衛隊P1哨戒機への火器管制レーダー照射事件のことだ。
この事件は最終的に韓国軍がレーダー情報の提供を拒み、照射の事実はないと最後まで突っぱねて終わった。ただ、海自側には、レーダー照射を告げる警報がP1哨戒機で鳴るなど、客観的な証拠がそろっていた。事件直後、日本側の照会を受けた韓国国防部や軍合同参謀本部は事件の発生に驚く反応を示していた。こうしたことから、推論として、広開土大王の艦長が低空飛行するP1哨戒機にいら立ち、独自の判断でレーダー照射した可能性が高いとみられている。
この事件で、2022年5月に誕生した尹錫悦政権が日韓関係の改善に舵を切るまで、日韓防衛交流は停滞した。また、韓国は領土問題や歴史認識問題で日本に厳しい姿勢を示し続けている。その姿勢は理解もできるが、逆に自ら領土問題や歴史認識問題が浮上しないように神経を配るべきでもある。2018年事件を契機に、竹島周辺を訓練空域から外すなり、日韓の重要な政治日程と重なる場合は、大統領府や外交部と協議することを意識付けたりする努力が足りなかったと言えるだろう。
