日中関係が険悪化するなか、日韓関係もきしみ始めている。
韓国空軍の曲技飛行隊「ブラックイーグルス」が10月28日、竹島周辺空域で訓練飛行を実施。日本政府は30日の日韓首脳会談の直前だった点なども考慮し、11月上旬、航空自衛隊那覇基地で実施するはずだったブラックイーグルスへの給油を中止した。
韓国軍も事実上の対抗措置として、13~15日に東京都内で開かれた「自衛隊音楽まつり」への軍楽隊派遣を中止。さらに今月予定されていた海上自衛隊と韓国海軍による共同救難訓練の実施も見送られた。両政府や軍の関係者に取材すると、様々な問題点が浮かび上がる。
「訓練して当たり前の場所」「日韓会談とは関係がない」
韓国軍関係者によれば、ブラックイーグルスの訓練は年間飛行計画に基づくものだった。司令(大佐級)と飛行隊長(中佐級)らが協議して作成しており、韓国の大統領府や国防部などと協議したものではないという。
日本からみれば、「政治的に敏感な空域を飛ぶのに、政治判断を仰がないなど、信じられない」(自衛隊元幹部A氏ら)となるが、韓国軍にしてみれば、もともと竹島周辺は訓練飛行空域に指定されているため、「訓練して当たり前の場所」(関係者)となってしまう。
では、なぜ日韓首脳会談直前の時期に訓練をしたのか。前出の韓国軍関係者によれば、「日韓会談とは関係がない」という。
ブラックイーグルスは11月半ばにアラブ首長国連邦(UAE)で開かれるドバイエアショーへの参加を予定していた。同隊の使うT50練習機はフィリピンなどに輸出されている人気機種だ。T50をもとにしたFA50軽戦闘機もポーランドが最近、大量に購入している。ブラックイーグルスの海外での曲芸飛行展示は、「顧客がT50やFA50の性能や耐久性を確かめるうえでの試技という性格を兼ねている」(自衛隊幹部)という。
