将来の日韓ACSA締結に向けた一歩を逃す結果に
また、今回は自衛隊と韓国軍の間で物資を融通しあう物品役務相互提供協定(ACSA)締結に向けた重要な一歩を逃す結果になった。トランプ米政権が東アジアの安全保障を地域同盟国に任せたい動きを見せている今、日韓の防衛協力の強化は喫緊の課題と言える。日韓は2012年、ACSA締結の直前まで行ったが、当時の進歩(革新)勢力が猛烈に反対し、署名当日にキャンセルになった苦い思い出がある。航空自衛隊と韓国空軍は従来、相互訪問する際、ACSAがないため、民間業者と契約して補給を受けていた。
ところが、今回は日本側に「将来の日韓ACSA締結に向けた一歩としたい」(関係者)という思惑があり、自衛隊法の無償貸し付け規定を使い、自衛隊が直接給油支援することになっていた。自衛隊元幹部A氏は「那覇での給油が実現していれば、韓国軍にとってACSAの重要性を認識してもらえる良い機会になったのに残念だ」と語る。
日本国内でのナショナリズムへの影響は
ただ、あえて言えば、前述したように竹島周辺空域での韓国軍の訓練は常態化していた。日韓ACSAの重要性を考えれば、ブラックイーグルスの訓練への抗議と給油支援を切り離して考えることもできたはずだ。高市早苗首相は給油実現にこだわったと報道されているが、防衛省・自衛隊の判断が、保守強硬派の支持を頼みとする高市政権への忖度だったのかどうかは確認できていない。
韓国は給油支援中止の事実上の対抗措置として、「調整がつかなかった」という理由で韓国軍楽隊の日本派遣と日韓共同救難訓練の実施を見送った。日本政府関係者によれば、韓国側はこれで一件落着とし、12月からは再び防衛交流を進めたいとしている。しかし、現在は日中関係の険悪化もあり、日本国内でナショナリズムが燃え上がりやすい状況になっている。交流がすぐに正常化できるかどうか、まだ予断を許さない。