「カードを作れば、10万円の謝礼を貰える」

 だが、先立つものは金だった。西田は華代さんに「サラ金でカードを作れば、証券会社から謝礼として10万円もらえる」などとウソをつき、次々と華代さんにカードを作らせた。

写真はイメージ ©getty

 そのカードから金を引き出し、華代さんには“謝礼”を渡して、あとは自転車操業で金を借りまくり、事実の発覚を防いでいた。

 さらに「通帳に記帳すると、証券会社に分かる仕組みなので、手数料として50万円取られる。だから自分が管理した方がいい」などと言って、華代さんの口座を管理するようになり、そこからも金を引き出していた。

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 もちろん、それだけでは生活費が足りないので、別の知人男性にも同じ話をして、華代さんと付き合っている間に800万円もの金を借りていた。

 西田は自分の正体がバレそうになると、「出張することになった」「入院することになった」などと言って姿をくらまし、華代さんには頻繁に別れ話をして気持ちを揺さぶり、「何でオレを信じてくれないんだ……」とさめざめと泣いて、復縁するという行為を繰り返していた。

 華代さんは西田の巧妙なウソに騙され、相手の両親に会うこともなく、自宅に一度も招かれないまま、6年間も西田と付き合っていた。

「ウソつき! どういうことなのよ!」

 ところが、結婚話が煮詰まってきても、西田が両親に会わせようとしないので、華代さんは不審に思い始め、西田から聞いていた自宅マンションを訪ねてみた。すると、そこには西田が住んでいないことが判明。勤務先として聞いていた居酒屋も存在しないことが分かった。

「ウソつき! どういうことなのよ!」

 西田は華代さんに問い詰められ、自分の素性が全部ウソだったことを認めた。

「でも、オレの気持ちは本当だ。心から愛している。お父さんやお母さん、おじいさんやおばあさんにも尽くしていきたい」

「アンタが無職の流れ者だったなんて、今さら親に説明できるわけがない。もう家に来ないでよ!」

 困惑した華代さんは友人たちに相談し、「サラ金でカードを作ったら、謝礼がもらえるなんておかしい」と指摘され、サラ金会社に問い合わせたところ、自分のカードで計201万円の借り入れがあり、そのうちの121万円が返済されていないことが分かった。また、自分の口座を調べたところ、計382万円が無断で引き出されていたことも分かった。

「騙されていた。もうあいつとは別れる。もう二度と会わないから協力して欲しい」

 事件の1週間前、華代さんは母親にすべてを告白した。カードが使えなくなったことを知った西田は、激怒して電話してきた。

次の記事に続く 《懲役は…》「心から愛していた」元恋人をなぜ包丁で50ヵ所も刺したのか…? 26歳女性を殺害した男(30)の「あまりに身勝手な犯行理由」(平成24年)