「心から愛していました。6年も付き合い、当然結婚するものと思っていました」
2012年(平成24年)、関西地方で金銭トラブルの末に元婚約者を殺害した30歳男性。愛していたはずの元恋人に、なぜ包丁を首を突き刺す凶行に及んだのか──。事件のその後を追う。なおプライバシー保護の観点から本稿の登場人物はすべて仮名である。(全2回の2回目/最初から読む)
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「金づる」を失って困窮した犯人
事件の1週間前、華代さんは母親にすべてを告白した。カードが使えなくなったことを知った西田は、激怒して電話してきた。
「お前、何てことしてくれたんだ。手数料で50万円取られるって言っただろ!」
「まだそんなこと言ってるの? いい加減にしてよ。もう騙されないよ。アンタとは別れる!」
華代さんの決意が固いことを知ると、西田は何度も電話してきて、「なぜ、今回だけダメなんだ?」と食い下がったが、「これ以上、しつこくするなら警察を入れるよ!」と言われ、電話にも出てもらえなくなった。華代さんは西田が押しかけてくることを恐れ、友人宅に避難した。
突然、金づるを失い、西田は著しく困窮した。「殺してやる!」と怒りをたぎらせたが、もはや凶器を買う金もない。そこで仕方なく、800万円を借りていた知人男性のところへ行き、「これが最後のお願いだ」と土下座して頼んだ。
「今までデタラメを言って騙していたことも認めます。3日後には800万円を一括で返済します。証文も書くし、保証人も付けます。どうか10万円貸してください」
西田は知人男性と一緒に年金暮らしの祖母宅へ行き、「保証人になってほしい」と頼み込み、10万円を借りることに成功した。その足で包丁、催涙スプレー、双眼鏡などを買いに行き、華代さんの自宅の様子を調べて、華代さんが実家に戻ってきていることを確認した。
事件当日、西田は堂々と華代さんの実家を訪問。詳しい事情を知らなかった祖父母は、「西田くんが来たよ」と華代さんと引き合わせ、華代さんは顔面蒼白になった。
