野外で自慰行為を強要し、裸の画像や動画を撮影
この事件の翌月、週刊誌が女の子の死の背景に、いじめがあったことを調べて記事にしました。これによって事件の調査委員会が結成されて調査を行ったところ、上級生による女の子に対するいじめの中に性的な行為が多数含まれていたことが発覚します。
具体的には、野外で自慰行為を強要される、身体を触られる、電話をしながら自慰をさせられるといった行為で、児童ポルノにかかわる案件としては、裸の画像や動画を撮らされていました。
女の子はそれをやらされていたらしく、SNSで上級生に送ったメッセージには次のように記されていました。
〈動画とりたくない〉
〈動画が嫌なんです〉
〈動画って何か怖い〉
〈動画無理です〉
この悲痛な訴えからは、児童ポルノの被写体にされることに対する恐怖と苦痛がにじみ出ています。[参考:旭川市『旭川市いじめ問題再調査報告書(公表版)』]
いじめによって死に追いやられたも同然
度重なるわいせつ行為によるいじめが原因となり、女の子はPTSDになって病院に入院し、その後も学校へは行かず、家から通院して治療を受けていました。極寒の夜に家を飛び出して行方不明になったのは、そうした最中の出来事だったのです。
このように見ていくと、直接の死因は低体温症だったかもしれませんが、上級生からのいじめによって、彼女は死に追いやられたも同然でしょう。性犯罪は「魂の殺人」と呼ばれますが、この事件も実質的には殺人と言っても過言ではないと思います。
旭川市の事件が全国ニュースとなったことによって、わいせつ行為によるいじめが児童ポルノにつながる実態が知られるようになりましたが、全国規模で見れば氷山の一角と捉えるべきです。増加している70万件以上のいじめ事案の中には、彼女が受けたような性加害も相当数含まれていると考えるのが妥当なのです。
「いじめの加害」が「児童ポルノの加害」になるケースも
同じようなことは、同性間で起こるいじめにおいても当てはまります。
たとえば、東京都のある私立中学では、修学旅行の際に中の男子生徒が同級生から自慰行為を強要された上、動画で撮影され、それを校内で拡散されたという出来事がありました。学校側が把握しているだけでも、20人近い生徒が動画を所有していたそうです。
被害を受けた男子生徒は、旭川市の女の子同様に病院でPTSDと診断されました。これもまた、性的ないじめによって生み出された児童ポルノです。
このように、スマホ全盛の時代にあって、学校のいじめの加害者になるというのは、一歩間違えれば児童ポルノの加害者になることでもあるのです。デジタルネイティブのいじめのあり方を、社会はもっと深刻に捉え、把握する必要があるでしょう。
