いじめ、性の問題行動、SNSでの誹謗中傷、暴力、自傷。今や子どもは、加害者にも被害者にもなり得る時代。しかも、その「きっかけ」や「背景」は、大人が思う以上に複雑に、かつ見えにくくなっている。なぜ子どもによる加害が起こるのか。被害はどのように拡大していってしまうのか。

 ここでは、教育現場を長年取材してきた石井光太氏の著書『傷つけ合う子どもたち 大人の知らない、加害と被害』(CEメディアハウス)より一部を抜粋して紹介する。(全2回の1回目/2回目に続く

写真はイメージ ©graphica/イメージマート

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ネット交際の中で生み出される児童ポルノ

 このようなネットの交際の中で生み出されるのが、児童ポルノです。

 オンラインの中で関係が完結していたとしても、当の本人たちは“交際”していると思っています。たとえ相手の本名を知らなくても、対面で会話をしたことがなくても、自分たちは愛し合っているカップルなのだと自認している。

 思春期の子どもが、そういう認識で相手と日常的にメッセージの交換をしていれば、性的な欲求が高まるのは自然の摂理です。両者の関係が対面のものである場合、そこから手をつなぐ、キスをする、抱きしめるといったように段階を踏んでいくのが慣例ですが、オンラインとなると、物理的にそれができません。

 そこで、彼らの一部はオンラインの中での関係のまま、一足飛びに性的なことを求めるのです。たとえば、次のようなやりとりが行われます。

「俺のことを好きなら、裸の写真を送ってくれないかな」と求められ…

〈俺のことを好きなら、裸の写真を送ってくれないかな〉

〈………〉

〈俺たちカップルだよね。俺のこと嫌い?〉

〈そうじゃないけど……〉

〈じゃあ、下着だけならいい? 俺、君のこと好きだからそういう姿を見てみたい〉

〈わかった……。絶対誰にも見せないって約束してくれる?〉

〈もちろん、誰にも見せない。絶対大丈夫〉

〈じゃあ、1回だけだよ〉

 このようになし崩し的に下着姿の写真を送ります。そうすれば、相手はもっといけるはずだと考え、少しずつ要求をエスカレートさせていき、裸の画像を求めたり、ビデオ通話を用いたわいせつ行為を求めたりするようになっていく。頼まれる側も、一度撮影をして送信をすれば、精神的なハードルが低くなって、「恋人同士なんだから仕方ない」という心理で従ってしまいます。