いじめ、性の問題行動、SNSでの誹謗中傷、暴力、自傷。今や子どもは、加害者にも被害者にもなり得る時代。しかも、その「きっかけ」や「背景」は、大人が思う以上に複雑に、かつ見えにくくなっている。なぜ子どもによる加害が起こるのか。被害はどのように拡大していってしまうのか。
ここでは、教育現場を長年取材してきた石井光太氏の著書『傷つけ合う子どもたち 大人の知らない、加害と被害』(CEメディアハウス)より一部を抜粋して紹介する。(全2回の2回目/1回目から続く)
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学年が上がるといじめに性加害が含まれるようになる
本記事で取り上げたいのが、いじめの中でわいせつ行為が行われ、それが児童ポルノを生むケースです。
いじめといっても、小学生くらいの年齢の子どもであれば、相手の悪口を言うとか、シカトをするといったくらいで終わります。しかし、中学生、高校生と学年が上がると、そこに性加害が含まれるようになります。
具体的には、トイレなどの個室に呼び出して服を脱がせる、授業中に背後からブラジャーのホックを外す、キスなどの他人へのわいせつ行為を強制するといったことです。
加害者は性的な興味からそれをすることもあれば、直接的な暴力より、はるかに大きな精神的ダメージを与えることをわかっていてすることもあります。そしてこれは必ずしも女の子だけが被害者になるわけではなく、男の子が男の子に対して加害することも普通に起こりうるのです。
昔からこうした性的ないじめはありましたが、現代で特徴的なのは、いじめの中でわいせつ行為をしているところを、スマホなどの通信端末で撮影することでしょう。加害者は相手を辱めるだけでなく、その画像を所有することによって「大人に告げ口をしたら、これを拡散するぞ」と暗に脅しているのです。
氷点下17度の中で行方不明となり、低体温症で死亡
こうしたいじめが全国的に脚光を浴びたのが、2021年に北海道で起きた「旭川女子中学生いじめ凍死事件」です。
被害者は、中2の女の子でした。彼女は発達障害があったことから教室で孤立しがちだったそうです。なかなか同級生の輪に入れず、上級生との関係に居場所を求めました。
ところが、その上級生からも彼女は凄惨ないじめを受けることになります。これによって心が壊れてしまったのでしょう。2月の夜、外は氷点下17度だったにもかかわらず、彼女は突如、家を飛び出して行方不明になりました。
家族らが慌てて警察に届け出をして捜索が行われたものの、1カ月後に公園で死亡しているのが見つかりました。死因は低体温症とされました。
