高羽悟さん(69)の妻・奈美子さん(当時32)が命を絶たれたのは、1999年11月13日の昼頃のことだった。それから26年の時を経て、犯人の女が出頭。逮捕された安福久美子容疑者(69)のあまりに永い“逃亡生活”の実態は、警戒と大胆さが入り混じる、虚飾にまみれたものだった――。現地総力取材で明らかになった驚愕の真実とは?

 

 現在配信中の「週刊文春 電子版」および11月20日(木)発売の「週刊文春」掲載の記事から一部を抜粋してお届けします。

部員たちには周知の事実だった恋心

 2人姉妹の長女として名古屋市で育った安福久美子は地元の中学を卒業後、愛知県立惟信高校に進学。軟式テニス部の部員同士として知り合ったのが、高羽悟さんだった。

「安福がテニスを始めたのは高校から。中学から始めていた子とかに比べたらそんなに特別上手な方ではなかった」(悟さん)

 安福が悟さんに恋心を抱いていたことは、部員たちには周知の事実だった。

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「2人とも特段モテるタイプじゃなかったけど、久美ちゃん(安福)が悟のことを好きだということは皆が知っていた」(当時の部長)

 悟さんもこう述懐する。

「彼女から高校2年と3年で連続して手紙付きのバレンタインチョコを貰ったんですが、僕は彼女がいつも一緒にいた親友のことが好きだった。かといって『きみの親友が好きだから』と言うわけにもいかないので、キッパリ言わず、やんわり断っていたんです」

 
高校時代の悟さんと安福(上。卒業アルバムより)

一流自動車部品メーカー勤務の男性と結婚

 卒業後、悟さんは私立愛知大学に進学し、安福は1浪の末、愛知県立大学に入学。別々の道を歩み始めた2人だが、安福の“偏愛”は消えるどころか、拍車がかかっていく。彼女は浪人中、悟さんが通う愛知大学まで押しかけた末、「君の気持ちには応えられない」と悟さんに諭されると、突然号泣し始めたという。

 その後、安福は別の幸せを掴み取る。1歳下の、名古屋大学卒、一流自動車部品メーカーに勤務する地元のエリート男性と結婚したのだ。事件から5カ月の同窓会で悟さんと再会した頃、安福は10歳の長男、5歳の次男の子育てに励んでいた。だが、悟さんへの猛烈な自己アピールは、理想と現実の狭間に立たされた彼女の懊悩の裏返しだった。

 社会部記者が解説する。

「地元の中日新聞がスクープしましたが、事件の約10年前、安福は重い血液の病を患っていた長女を亡くしているのです。当時の住まいは、夫の実家。小学校に上がる前に長女が病死したことに対し、同居していた夫の両親が叱責。周囲には思い悩んでいる様子を見せていたといいます」

 長女の死を封印していた安福は、悟さんとの再会によって歪な情念を滾らせていったのだ。

この続きは「週刊文春 電子版」および11月20日(木)発売の「週刊文春」で読むことができます。記事全文では「『重い病気で』長女が病死、コーチを付けて週1テニス」「一流メーカー勤務夫と優雅な老後『ヨーロッパ旅行に』」「悟さん『怪我した彼女を夫は疑わなかったのか』」などのトピックを詳しく報じています》

次の記事に続く 【名古屋主婦殺害】「私がいる間に絶対捕まえる」安福久美子逮捕にこぎつけた愛知県警刑事の執念「詰め切れていない女がいるはず」