撤退事業を判断する「KKK会議」
サイバーエージェントは新規事業をバンバン立ち上げてきた会社である。でも私としては、「事業を新しく始めることよりも撤退を決めるほうが大事だ」「撤退基準があるから新規事業が始められる」ということを、口癖のように言ってきたし、社内の制度にも盛り込んできた。
ある一定の基準、「2四半期連続で減収減益」などに引っ掛かると、審議にかけられ、撤退するか改善するかどちらかを判断する。最近ではKKK会議(企業価値改善会議)というのが新たに生まれた。ネーミングの怖さも手伝ってこの制度はとてもうまく行っている。KKK会議送りとなった問題のある事業を、社内の他部署の人たちで数チームに分かれて客観的に分析し、継続するか撤退するかを決めるというものだ。
なぜ社内でこのような制度を作っているかというと、自然体では私であっても撤退の判断が難しいからだ。その事業を始める判断に自分が関与していることもあるし、巻き込んだ張本人だったとしたら、迷惑をかける人の顔が目に浮かんでしまい、続けると損失が拡大するのは分かっていても、まともな判断ができなくなる。そして判断することを先送りしてずるずると傷口を広げてしまう。
だから制度のせいにして「社内規定により……」と言えば強制力を発揮できるし、あらかじめ撤退基準が決まっていれば、それが関係者に周知されて心の準備もでき、諦めがつく。
前回、麻雀は4分の1しか上がれないのだから、欲に負けずにオリることが大事という話を書いたけど、数多いる麻雀プロの中でも現役で最強水準にいる多井隆晴プロは、「撤退戦」の名手だ。