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撤退が決まった「事業の責任者」は不思議と…
長年のキャリアの中でたくさんの辛酸を舐めてきた彼は「配牌オリ」さえも駆使する。配牌オリとは、一打目から全く手牌を組み立てず、その一局をオリ切ることだけに集中してゲームを進めることだ。
ここまで来たら名人芸だけど、実際に自分がやれと言われたら簡単ではない。可能性のある手を後ろ向きに進めるなんて、とんでもないストレスだ。対局を見ている視聴者も配牌オリは面白くないと苦情を言ってくる人がいるけど、誰よりやっている本人が苦行だろう。しかし、撤退戦にはそれだけの価値があるのだ。
私も会社を起業したばかりの20代の頃はイケイケどんどんで、前に出ることしか考えていなかった。だけど「撤退戦」の大切さに気づけたからこそ、長く生き残れたのだと思う。「サンクコスト」という回収不可能なコストを表す言葉があるけど、人生においても、それまでに費やした労力やお金がもったいないという理由で判断を間違える人は本当に多い。だから、誰かに背中を押してもらうことも必要なのだろう。
前述のKKK会議で撤退が決まった事業の責任者は、誰かに引導を渡してもらえるのを待っていたかのように、不思議と安堵の表情を浮かべることが多いのである。
