「漫画家になって、全員を見返すんだ!」
異色の「漫画家マンガ」がいま話題になっている。文春オンラインで連載され、このたび単行本が発売となった『ゲットバック』は、さえない男子高校生2人がコンビを組み、プロ漫画家を目指す物語だ。ボンクラの長谷川が原作を考え、不登校の竹夫が作画を担当。級友をモデルにしたゾンビマンガを投稿したところ、新人賞に入選してしまう──。
著者は『ジンバルロック』や『ワイルド・ナイツ』など“とがった作風“で知られるサブカル界の異才、古泉智浩氏。マンガに賭けた青春の〈夢と現実〉、創作の〈喜びと苦悩〉が交錯する、令和版『まんが道』ともいえる内容となっている。
『ブラックジャックによろしく』の佐藤秀峰氏や『これ描いて死ね』のとよ田みのる氏が本作の帯に推薦文を寄せるなど、漫画業界からも注目を集めている。著者である古泉氏に、『ゲットバック』を描いた動機、読み所などについてお聞きした。(全2回の1回目/続きを読む)
出張編集部で門前払い
──この作品の構想を思いついたきっかけについてお聞かせください。
古泉 数年前、コミティア(同人誌即売会)の出張編集部に持ち込みに行ったときの体験が大きかったですね。実は僕も若い頃は“新人賞荒らし”だったんです。「ヤングマガジン」ちばてつや大賞や「アフタヌーン」四季賞をはじめ各出版社の新人賞を7回受賞しているんですよ。だから、ある程度面白いものを描けば、すぐに仕事につながるだろうと思って持って行ったら、全く相手にされなかった(笑)。
──出張編集部はマンガ雑誌の若手編集者が対応するんですよね。どういう反応だったんですか?
古泉 「絵柄が古い」とすごく言われました。顔見て言ってるだけじゃないか、と思うんですけどね。悪いけど、僕の絵は古くないはずなんです。なぜかというと、誰の影響も受けてないから。一世を風靡した絵が古びることはあると思うんですけど、僕の絵は1回も流行ったことがない。特定の誰かの影響ではなく、下手くそなクロッキーから自分で作った絵柄なんです。
――たしかに、手塚治虫にも水木しげるにもちばてつやにも似ていませんね……。
古泉 でしょ。だから「絵柄が古い」とか「テーマが分からない」とかは門前払いするための口実で、要は「面白くない」ってことだろうなと。出張編集部のなかでもアニメ系や異世界系ははなからダメだろうと思って、「ビッグコミック」のようなオジサン向け雑誌や、汚い絵でも載せてくれる「ヤングマガジン」みたいなところとか(笑)、色々回ったんですけど、全然ダメでした。
ただ、僕のマンガ教室の弟子だったM君の名前を出したときだけ、「M先生の先生ですか……!」と手のひらを返したような反応があったのが、余計悲しくなりました。
──若い編集者は古泉さんのマンガを知らないんでしょうね。
古泉 同じネームを大学生の子に替え玉として持ち込みさせてみたらどうだろう、とか考えさせられました。
──そのときの経験から生まれたのが……。
古泉 『ゲットバック』のいちばん最後に載っている『出張編集部』というネームです。出張編集部に持ち込みに行った年をくった漫画家が色々言われて凶行に至る、という17ページの読み切りです。
弟子で漫画家の髙橋ツネミ君と「ネタ出し会」というマンガの勉強会を行っているんですが、そこで見せたところ、まるで反応が良くなくて。「物騒なだけ」「ひねりがない」とか言われたので、これは原稿にしない方がいいな、とボツにしたんです。





