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2018/08/25

もしかしてベイスターズも、思春期なのかもしれない

「ボールが捕れたよ!」「バットにボールが当たった!」と喜んでいた時期はあっという間だった。「試合に出れた」「試合に出て活躍できた」とハードルはどんどん上がって行く。喜びはいつしか「試合に出て活躍できなかったらどうしよう」という、プレッシャーへと変わる。日曜日、緊張いっぱいの表情で試合に向かっては、落胆の様子で帰ってくる長男を見ていればよくわかる。電車は新子安をゆっくりと発車した。

「うれしいとか緊張するとか、そういうのもう全部経験してるプロ野球選手は、一周して『野球たのし〜』みたいになるんだなってオレ思ってた」。長男のその言葉に「いやそんなことないでしょ……」と言いかけて、止まった。もしかしてベイスターズも、思春期なのかもしれないと。去年CSを勝ち上がり日本シリーズまで経験して、今年はついに優勝かと、みんな色めき立っていた。今広島との圧倒的な差を見せつけられ、ついには最下位にまで沈んで、満員御礼のハマスタはもどかしさに包まれ、あの時の期待は汚いヤジへと姿を変えていた。

もどかしさに包まれた横浜スタジアム ©西澤千央

 その中で選手たちは……もしかして必要以上に冷静でいよう冷静でいなきゃと力んで、本来どのチームより持っているはずの「野球たのし〜」を忘れてしまっているのかもしれない。「アホみたいな人が無理やり盛り上げなくても、余裕で10点取れるのが西武と広島だとするなら、ベイスターズはそうじゃないから、だったらベンチにそういう人がいたほうがいいんじゃないのかな」。思春期が思春期を語っていた。でもそうだ。だってママ、アンタがたとえ10点差でも「絶対勝つ!!」って言ってた時、もしかしたら勝つんじゃないかって思ったもん。野球のセオリーとかシステムとかから考えたら0.001%くらいの奇跡だとしても、もしかしたら起こるんじゃないかと思ったもん。

 大人になる前のほんのひととき、大人の振りをする季節、思春期。だけど大人になるために、必ず通過しなきゃいけない、思春期。今は、ベイスターズにとっての思春期なのかもしれない。本当に強いチームになるために、これは必要な経験なのかもしれないって。だって思春期は永遠ではないから。

「ベイスターズのどこが好き?」。車内アナウンスが川崎への到着を告げる頃、私は聞いた。しばらく考えて「他のチームって強いじゃん、ベイスターズより。だけどたまに逆転とかするじゃん。それが好き」と照れたように答えた。小さい時のままの顔だった。「あとやっぱ、みかん氷食べればよかった、お腹すいた」。

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